犬も歩けば棒にあたる


なかなか寝付けない夜になった。
ゲンの存在がうれしくて落ち着かないせいなのか。
ペロッと鼻の頭を舐められた。

「わ、やめろよ…」

顔を背けても、ゲンはしつこく頬や首を舐めるのをやめてくれない。
幸村の体の上に前足を置いて、おしりを持ち上げて尻尾を盛んに振っている。

「遊びに誘ってるのかい?」

急に人(犬)が変わったようなゲンに問いかけた。
フンフンとパジャマの中に鼻先を潜り込ませてきたから、くすぐったくて体を起こした。

「わかったわかった。玩具を取ってくるから待てって…」

ベッドを離れようとした時、ズボンを引っ張られて床に突っ伏すかたちになった。

「痛っ…こら、ゲン!」

脱がされたパジャマのズボンを着直すつもりが、ゲンの口はそれより早かった。
器用に下着を足首まで下ろしてしまう。

(もう…犬相手に何やってるんだ)

立ち上がろうとしたところを、またしてもゲンに阻まれる。
臀部を舐められてぞくっとした。

「ゲン、ゲン」

呼びつけても言うことを聞かない。

「え!ちょっと…まて」

ゲンの舌は、臀部から下へ下へと割れ目に沿って舐め進めてくる。
振り返って見れば、常夜灯のほのかな明りの中、フンフン鼻を鳴らして幸村の恥ずかしいところをしきりに嗅いでいた。

「………」

そのうちに、アソコに濡れた鼻先を押し付けてくるゲンの行動を黙って受け止めるようになった幸村は、

(悪い事したら叱らないといけないのに…俺…)

うつ伏せのまま、ゆっくりと股を開いた。
そうすれば、ゲンは鼻面で幸村の尻を下から突いて上へ押し上げてくる。

「ン…こう…?」

膝を付いて、尻を高く上げる態勢をとる。
ゲンは「ぅわん!」と一回唸るように鳴いて答えた。

「ぁ、すごい、ぃ…」

舐めやすい位置になったのだろう。
ゲンの舌は縦横無尽に動いた。
時々、力強く鼻面で突かれると幸村は我慢できずに短い声を上げた。
それから、

「……ゲン……弦…」

うわごとにの中に真田弦一郎を思い浮かべて、心臓が飛び出すほど驚いた。

(なんで、俺…)
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