大切な…

部屋を飛び出すと、一番に蓮二に会いたくなった。
きっと、黙って話を聞いてくれるから…。
しかし廊下の先で聞こえたのは、今一番会いたくない声だった。

「あー!神の子さんやぁ!!」

向こうから指を差された。
その後ろから白の帽子に手を掛けて、

「ふーん。テニスは楽しめてるの?」

あの挑戦的な目で、ニッと笑う。
それを見た俺は踵を返して、走った。

「次はわいと勝負してやー!!」

耳を塞ぐ。
嫌だ、嫌だ、イヤだっ! 蓮ニ、どこにいるんだよ。いつも俺が困ってると、すぐに察して側に来てくれるじゃないか。
赤也、ブン太、ジャッカル…どこでばか騒ぎしてるんだ。俺に内緒で楽しいことするなよ。
仁王、柳生…また誰かに変装してるんだろ?早く出てこい。今の俺には見分けられないよ。
涙で視界が滲むから…。
それぞれの部屋を訪ねてみたが、誰も部屋には居なかった。

(…真田)

走る足を緩めて、呼吸を整えながら歩いた。あの時みたいに、苦しい。
また倒れたら、部長は辞めようと思う弱い自分がいる。
と、幸村が手をつこうとした部屋のドアが開いたから、出て来た相手にぶつかった。

「っと、悪い」

顔を上げて見ると、氷帝の跡部が眉間にシワをつくって立っていた。
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