つまり だから ほら
ラケットを振りかざした時に見え隠れする脇腹とか、ボールを追ってギリギリ届いた時のハーフパンツから伸びた太股とか…
真田の隠れた部分が見たくて、いつの頃からかそれは幸村のテニスの密かな楽しみになった。
ネットを挟んで真田と向き合うと、右へ左へ真田を走らせ、ロブを上げてスマッシュを誘ったり、わざとネットにボールを当てて真田をダッシュさせた。
最近はめっきり強くなった真田相手に、そんな余裕はなくなってきたが。
(俺って変態だったんだ…!)
今、目の前にある真田の上半身は、部室の更衣室でちらっと見るのとは迫力がちがう。
(こんな男とテニスできてる俺ってすごくしあわせなんじゃないかな)
「どうした、顔が赤いな」
「ぅ…だって」
「ここも」
「そこは…ぁ!」
口に含まれて、飛び起きた。
厚みのある唇から白い歯が覗いて、恐怖を抱く。
「何も取って食いはしないから怖がるな」
いつになく意地悪そうにニッと笑った真田にドキッとした。
(そんな顔…)
赤い舌が、滲み出る体液を舐めとってわざとらしく音をたてる。時々歯を当てられれば、我慢できずにわっと声を荒らげた。
「は、ずいぶん大袈裟だな。こんなことではこの先の俺に付いて来れんぞ」
「だって…」
怖がっていても、幸村は萎えなかった。
真田に威圧されるのが気持ちよかったのだ。
「ほう…てっきり優しくした方がいいと思ってどうにも自信がなかったが」
真田は見せつけるようにして、赤い舌で指を舐めた。もうその様子を眺めるだけで、幸村はぽうっとする。
「ンぐ――!」
いきなり指を口に入れられてびっくりしても、
(俺…真田と間接キスしてる)
そう思えば、真田の指を夢中になってしゃぶった。指を2本3本と増やされて苦しくなっても、唾液まみれになっても真田がよしとするまでひたすら咥えた。
(次は、どうするんだろ…)
指を抜かれて呼吸を整えていると、頬に手を添えられて、
「何があってもじっとしていてくれ」
きりりとした真田に見とれながら、うなずいた。