大切な…

こちらがおとなしくしていれば、不二の文句はまだ終わらない。

「それと、よくも手塚の肩を壊してくれた
ね」

「せやなぁ、あの試合は見てる方も辛かったわ」

「あれは…っ!」

手塚だって、真田の真っ向勝負を潔く受けた筈だ。
真田は俺の指示を振り切って戦った。
互いにボロボロになりながらも最大限の力を出して、決着をつけた。
そして真田も膝を痛めた。
いい試合だったはずだ!
手塚もそう感じていたに違いないのに。
唇を噛み締めていると、 さらに不二が追い討ちをかけてくる。

「どっちにしても、立海の皇帝はうちの1年に負けてるけどね」

真田はずっと前から、手塚を良いライバルとして認めていた。
手塚を越えるため、強いては青学を倒すために、越前とも正々堂々とやり抜いたはずだ。
もしかしたら俺なんかよりもその二人に一目置いているかもしれないのに、と複雑な思いが募っている。
だから、悔しかった。

「とにかく、僕たち青学に負けたんだから、その辺わきまえてくれるかな?」

変なトリックプレイとか挑発的なダブルスはやめてよね、とも言われた。

「神の子てのも、なんかなぁ?」

続けて白石が笑えば、不二も笑った。
二人に挟まれて、堪らなくなって椅子から立ち上がる。
ドアノブに手を掛けた時、

「せや、金ちゃんに構ってやってなぁ」

「越前も、よろしく頼むよ」

その声を背に、ドアを閉めると涙が溢れて止まらなかった。
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