城主幸村を救え


「ちょっとタンマ!アンタら幸村部長に会う資格あるんスか?」

飛ばしたテニスボールを素手で受けた白石に、にこりと笑い返された切原は思わずたじろいだ。
さらに、

「君にはまだ幸村を扱えないだろからね。僕だったら彼の心を動かしてみせるよ」

不二の切れ長の目が威圧を与える。

「自分の力不足を恨むんだな、切原。幸村のテニスが戻るなら俺様は荒療治も厭わねぇつもりだ」

跡部の強腰を前にして、自分の役立たずに悔し涙を流す切原だった。
そんな切原の肩を優しくたたく桑原と、値踏みするように部外者の三人を睨み付ける丸井がいる。

「…切原君。彼らに託してみましょう」

切原に同情する柳生の声も少し震えていた。

「今の立海は弱い。幸村を失って落城寸前の脆さを感じるぜ」

前を歩く柳生に聞こえないように声を潜めて跡部が言った。

「そうだね。それだけ幸村の存在が大きいなんて驚いたよ。早く彼に会ってみたいね」

「守られてんねんなぁ幸村クンは。もちろん、弱いから、てわけやないのはわかるけどな」

書状では、幸村は楽しむテニスに苦しんでいるという。 正直、このまま立海に居ては快癒しないのではないか。常勝という圧力に縛られてきた部長としての幸村の精神を思うと、三人の心はいくらか沈んだ。

「おい。そもそも青学のとこのチビに責任があるんじゃねーのか」

「越前は自分のあたりまえのテニスをしただけだよ。皮肉な結果になったのは残念だけどね」

「幸村クンは、絶対勝利の自分のテニスを否定されたんや。トラウマになるのも無理ないわ」

「なんだか二人ともやけに幸村の肩を持つね」

不二は納得がいかないようだ。凄みを利かせた流し目は、跡部と白石をひやりとさせた。

「…別にそんなんじゃねぇよ。ただ、同じ部長として放っておけねぇからな」

「せやで、不二クン」

「………そう。それなら僕も口下手なうちの部長に代わって協力するよ」
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