城主幸村を救え
あの王者立海の部長、幸村精市がテニスを諦め兼ねない窮地に立たされているという。
そんな衝撃的な報が各校に届いた。
『意気消沈、戦意消失甚だしく、コートに立てば憂えるその横顔は見るに耐え難い。
かつての後光、威光の纏い無く、ラケットを手放したその手に今は、只ひたすらに草花を愛でるばかりである。
口を開けば楽しむテニスとは何かと片言に呟き、嘆き悲しむ日々を送っている。その美しく儚げな我が部長の頬に伝う涙のなんと憐れなことか……云云
我こそは幸村の呪縛を解いてみせようという者を広く募る』
長文のため、ざっと要約するとこんな様な書状の差出人は、真田弦一郎とあるが、おそらく柳蓮二との合作だろう。
「ふふ、達筆すぎて難解だね」
「生まれる時代を間違えたんじゃねぇの?アーン」
「なんや幸村クンの扱いがおもろいなぁ」
この書状の内容に興味を示した青学、氷帝、四天王寺から、 三者三様名乗りを上げた。
「うちのルーキーの影響みたいだからね。あの試合がトラウマなら…ふふ、少し可哀想かな。次は僕が彼に色々教えてあげようかな」
「幸村精市…奴のいない立海なんてあり得ねぇだろ。あいつが古城の一輪の花だからな。俺様がまた咲かせてやろうじゃねぇの!」
「幸村クン、テニスもせんとどんな顔して過ごしてんやろ。なんや呪縛とやらから守ってあげたなるなぁ」
「よくいらして下さいました。早速ですがご案内いたしましょう」
三人がそろって立海の門を潜ると、控えていたらしい柳生がすぐに出迎えた。
「ところで、幸村君…うちの部長に何か特別な思い入れでも?」
言葉は柔らかいが、眼鏡の奥の瞳を鋭く光らせて柳生が尋ねた。
「まあ、なんや興味はある。幸村クンとは気が合いそうやしな。もっと近付いてみたいのが本音や」
「幸村がテニスを諦めるだと?許されねぇ話だぜ。あいつに借りを返したいやつらは山ほどいるはずだからな」
「そうだね。ふふ…テニスを失くした彼は一見の価値があるかな」
どれも柳生が不安に駆られるような物言いである。
