大切な…

だから、不二の言葉に少し困った。

「切原君は?彼には、酷い目に遭わされたんだけどな」

これに関しては申し訳なく思っている。
謝ろうとすると、

「それと、越前もね。どうなの?」

詰め寄る不二の口調は強い。
攻撃的な後輩を持つと大変だねと付け加えられて、胸が締め付けられた。
違う、赤也はいい子なんだ。
少し感情のコントロールが上手くいかないだけで、あの時だって、立海の勝利に一生懸命で。
俺たち三年生に必死についてくるんだ。
しかし、

「ごめん。レギュラーでたった一人の後輩だから、甘やかしすぎたかもしれない…」

赤也を庇う言葉は出てこなかった。
だからって、あのぼうやはどうなんだと思う。

(あれでよく、赤也のことを悪く言えるな。 青学こそ、あの子に何を教えてるんだ。手塚がいながら。他人の技ばかり模倣して勝っているだけじゃないか。 真田の雷だって…!)

あの時の屈辱とトラウマが蘇って気分が悪くなる。

「わかってくれるならそれでいいんだ」

静かに勝ち誇ったように言われて、髪をなでてきた不二の手のひらを黙って受け止めた。
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