大切な…

机の上にある花のつぼみを指でつつきながら、後ろの会話を聞いていた。
互いの学校自慢といったところだろうか。
随分続くその話に、

「はぁ…」

静かにため息をつく。
机の上に伏せたまま、つぼみの両側にある2つの植物を交互に見る。

(そろそろ咲いてもいい頃なんだけどな)

何となく、花が咲かないのはこの環境がよくないような気がした。

「………」

圧迫感があるのだ。
例えば夜中、寝静まったあととか。
右側から、鋭い針で攻撃されているかもしれない。
左側から、変な毒素を飛ばされているかもしれない。
あり得ない想像だったが、急に背筋がゾクリとする。
同じタイミングで、

「なぁ、幸村君は?」

「どう思ってるんだい?」

驚いて後ろを振り返ると、そんな俺の様子に同室の二人が笑いをこらえているのがわかった。

「…え?俺は別に」

確か話題は、自分の学校のレギュラーについてだったと思う。
だから、自分は特に困っている事はないという返事をした。

「ほんまに?さすが、立海やなぁ」

「何かあるんじゃない?面と向かって言えない事とかね」

にこりと笑った後、開眼して声が低くなった不二がちょっと怖い。
肩に手を回してくる白石は、何を探ろうとしているのか。

「やだな、本当に何もないんだ。いいメンバーだよ」

白石の手をどけて、二人に向き合った。
そもそも人の陰口は嫌いだし実際、幸村にとって立海のメンバーは不自由ない大切な存在なのだ。
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