キングと神の子


この身体のどこから強烈な球威を打ち出しているのかと、幸村の身体をあらゆる角度から観察して思う。
跡部の目には、この筋肉や骨格が病の後の並々ならぬ努力の賜物であるとよくわかる。 そこに上乗せされるように貼られたテーピングは、

(お前のテニスを修復できたらいい)

そんな都合のいい解釈をした。

「恥ずかしいな。まだ鍛え方が足りないだろう?」

「いや…十分だぜ。それに肉体的なものだけじゃねぇ、他の誰にも真似できないものをお前は乗り越えて強さに変えた」

「こんな経験、俺だけでおしまいにしたいな」

俺だからどうにかなったけど、とぽつりと呟いた幸村に感動した。やはりこれは神の子で違いないかも知れない。

「フ…負けた礼に労ってやるぜ」

「どういう意味…!」

「もう立ってんじゃねーの、アーン?」

触ってみれば、そこは自分のものと大差なくて、ちゃんと男児らしくてとても興奮した。

「そんな、跡部…」

だんだん夢心地のような表情になる幸村から目が離せない。 もっといろいろな物事から楽にしてやりたくなる。

「どうしても見られたく、ないんだ…キス…してくれないか…」

車内に幸村の音と匂いが満ち満ちる。 それは跡部の目に耳に、痛みを感じさせるような鋭い刺激となった。
まずは舌先で唇を舐めてみる。 そうしていると、幸村の舌先が怯えるみたいに唇を割って出てきたその瞬間を狙って、跡部は自分の舌をその口内へ入り込ませてしまう。
声にならない幸村の声に応えるように、深いキスと下腹部の愛撫を休みなく続けた。 とうとう幸村を射精に導くことができたと実感した悦びは大きかった。

「ごめん…俺…もぅ、こんな所でなんて…跡部のせいだからな…」

「謝罪か文句かはっきりしねぇな」

涙目でふて腐れた顔が少し幼く見えた。こんな時でも負けず嫌いは保っているのが愉快だ。

「可愛いじゃねーの。幸村……精市」

ちゅっ、と唇をパッとくっつけるだけのキスをして、すぐに幸村を見つめる。

「ずるい…」

目が合うと、困ったようなむすっとした顔をして、そっぽを向かれてしまうが効果覿面だ。 幸村の下腹部が再び静かに動き出したからだ。

「このシチュエーション、ほんとは気に入ったんじゃねーの?アーン」

得意のボイスで耳に吹きかけるように言って聞かせる。 幸村は首を引っ込めるようにして身をよじった。

「ほぉら、お前の下は置き去りにされないように全力みたいだぜ?」

指先で先っぽをトンとつついてやる。 幸村は短く声を上げて呼吸を乱した。

「さあ、どうするよ幸村」

やはり跡部は攻めに責めている時が一番楽しい。しかし跡部も楽しんでばかりはいられない。ここまで幸村の姿態を見せつけられ続ければ、野性が五感を支配する。
本来なら強引に相手を意のままに扱うのが物事を行う方法としていたが、

(幸村には使えねぇ)

幸村のオーラが、跡部をもってしてもそうさせるのかわからない。 それに、

(俺から行くのはつまらねぇ)

幸村から哀願させる。 そうまでさせる価値を見出だした。
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