こねまわして!愛ス



『俺たちにセックスはいらないみたいだ。仁王が俺たちを羨ましがる理由がわかったよ(^-^)v』

幸村からのメールを受けて、仁王は言葉を失った。

「仁王くん?」

「あー…幸村が、新境地を開いた」

「ええっ!幸村くん、まだ境地があるんですか」

「神の子にはあるんよ」

家で柳生と二人、布団に腹這いで並んでいた。 これ以上ない満足感に浸っていただけに、幸村からのこの報告はイタイ。

「五感以外に奪うとなると…?」

頭に疑問符を浮かべる柳生の下顎をすくって、素早くキスをした。
キスひとつで、さあっと頬を染める彼が可愛くて好きだ。

「な、柳生…俺たちも新境地開こ」

柳生が意味を考えあぐねている間に、とっとと体を組み敷いてしまう。

「…ちょっと、何するおつもりですか」

こんな時、知っていてわざと、柳生は外していた眼鏡をかけ直して紳士面する。
ほんの少し前まで甘い声を漏らしていたくせに、ころっと態度を変える。憎らしいほど落ち着きを払った、そのそっけない視線を浴びるのも好きだ。

「まったく…さっきしたばかりでしょう」

「ペットの犬に餌あげる時みたいな言い草やの」

「犬ですよ、アナタ。拾ってくれってしつこかったから」

「でも、好きじゃろ?」

これは結構勇気がいった。
こう見えて俺、臆病なんよ。 まあ、いつもみたいに冷遇されたら、いつもみたいに冗談めかしてヤったろ。
しかし、今日の紳士は違った。

「…どうせ好きですよ」

ぽそりと呟かれたこの瞬間を、きっと忘れない。

(幸村。俺らはまだ老夫婦にはならんよ。真田の親爺もお気の毒ナリ)

思わぬ解釈に至った幸村の恋人論に、愉快さと、けれど捨てきれない羨ましさを得た仁王だった。

「仁王くん、電気…」

「プリっ」


end.
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