こねまわして!愛ス
仁王が柳生に特別な感情をもっていることは、すぐにわかった。
真田に食って掛かる剣幕が、尋常じゃなかったからね。 普段、人に興味の薄いあの仁王がだよ? 自分の事すら興味ないって感じのアイツが、誰かのために怒ってるなんて。
俺も、大概おかしいよな。 真田の恋人なら、真田を庇ったっていいのに。
「柳生に謝れ」
そう繰り返す仁王を見ていたら、なんだか真田が悪人に思えてきたよ。
どうせ真田のことだ。 仁王がどうしてそこまでして柳生を贔屓にするのか、わかってない。俺に対しても、そういう扱いはしなかったから。
いつも傍にいて当たり前だと思ってるんだ。
「たく…仁王のやつめ」
真田相手に一歩も引かなかった仁王は、とうとう真田の頬に鉄拳を下した。
―――お前が悪いよ、真田。
腫れた頬を忌々しげにドカリと椅子に座った真田に向かって、言ってやった。
「なに、幸村お前もか」
―――試合をする前から、柳生に圧力をかけたなんて酷い。試合をしてみないとわからないだろ。
「立海は負けてはならんのだ。それはお前の願いでもあるはずだ。またそれは、部長であるお前のためでもある」
真田は、俺と二人きりだとよく(テニスに関しては)激高した。
「お前を立海の部長として、恥ずかしくないようにするのが、俺の役目だ。仲良しこよしのテニスなら、俺たちに必要ない」
俺は真田のごたごたを聞くのにうんざりしてきて、着替えを始めた。
ユニフォームを脱ぎ終えた時だ。
―――…ちょっと、なに。
「これから付き合え」
ピタリと身体を寄せられた。
―――冗談。空気読めよ。
「俺のどこが気に入らぬのだ。副部長として、お前のために…」
真田の手は、さっさと俺のハーフパンツの中に忍んでいた。
…俺と真田は、思えば最初からテニスで繋がっていた。 テニス歴は、そのまま恋人歴といっていい。 仁王がいった、夫婦みたいな雰囲気は、ここからきているに違いなかった。
俺たちは習熟した仲だ。 幼い頃から、自然に、なんの努力もなしに恋してた。
だからかな。 仁王と柳生の、これから始まる恋のゲームが羨ましい。
後でわかったんだけど、「一目惚れ」なんだって。 驚いたことに、仁王に柳生のどこが好きなのか聞いたら、 「よくわからんけど好き」 って言った。
俺なら、真田のことならポンポン出てくる。 ああ、ウザいところもね。
嫌いなところも聞いた。
「知らん。てか、好いとるのに」 あるわけないって返された。
こわくないのか? 手探りの恋って、どんなだろう…
仁王と悶着を起こした真田は、俺に叱られてばつが悪くなったのだろう。 許しを請うているのだと、セックスの感じでわかった。
やんなるよなぁ。 こんなだから、会話なんて必要なくなるんだ。
ウザい真田が、好きなんだ。