こねまわして!愛ス
仁王は、いつも朗らかな柳生の、その態度の裏に隠れた涙もあるのを知っていた。
柳生は誰もいなくなった部室で、よく一人でいた。 声をかけると普段とかわらない穏やかな声で、
「仁王くん」
と返してくれる。
―――やーぎゅ、お疲れさん。
俺が後ろから抱きつくのは、もうお決まりで。 俺は柳生がテニス部に入ってくれて、毎日が楽しくなった。
柳生にテニスを教えるのも好きだったし、眼に見えて上達していく柳生が自慢だった。
―――なにしてンの。
「…いえ。なにも」
なんでもない風を装ってるらしいけど、俺にはすぐわかる。
―――やぎゅ、こっち向いてみ。
「はい…ン―-―」
思った以上に、テニス経験の浅い柳生は苦労の連続だった。 妙だけど、テニスより俺との身体の関係の方が深かったりする。
―――やぎゅ、舌、出しんしゃい。
「ぁ…」
眼を閉じて舌を出す柳生を見たら、キスするのがもったいなくなった。
「ちょっと…仁王くん?!」
練習でくたくたの柳生を押し倒すのは簡単で。
―――眼ぇつむって舌出しとき。
柳生の小さい尻が好き。 いつもゴルフ部のズボン越しで見とれてた。
「今日はキスだけにしてくださ…っ」
ハーフパンツと下着に手をかける。
「私、正直基礎練習でヘトヘトで。付いていくのがやっとで…だから真田くんにも……」
―――なん、真田?
柳生の身体を裏返して、問い詰めた。 元気のない理由はここにあると確信した。
だが、「告げ口するみたいで嫌だ」と、この紳士はきれいな尻を突き出して言うのだ。
「忘れてください」
頑なに口を閉ざしてしまった。
「ン―-仁王く、ン…」
―――ココ、どお?
柳生が好きだという、「仁王くんの長い指」で奥を探る。
「はぁ―-ァ…」
自分のモノに手をかけようとする柳生を、止めた。 俺は、赤い耳たぶを食んで、
―――なあ、真田が、何?
苦しそうに首を振る柳生を前にして、俺の方が切なくなる。
「もう、出……にお、く―-」
先走りがポタポタ垂れても、まだ口を割らない。 いくらでも出していいんよ、柳生。
―――入れていー?
柳生は黙って、でも入れやすいように膝を開いてくれた。
―――ありがと。好き、比呂士。
蠢くソコを目がけて、一息に滑り込んだ。
「は!アァ―-ァ…ぅ」
あ、ン、ン、は、あ、ン、ン…
繰り返す柳生の呼吸を聴きながら、俺は腰を打つ。 絡み合う体液が、ジュクジュクと泡立つ音となって俺たちを刺激する。
「にお、く…あの、仁王くん!」
―――なん、なん?!やぎゅ、言ってみ!
柳生が、伝えようとしている。
聞かないと、
聞かないと。
俺は繋がったまま、柳生を仰向けにした。 眼鏡を取ってやって、額と額をくっつけた。
「ぁ痛…にお、く…ン―-」
今はキスで、償わせて。
「…喧嘩、しないでくださいね…?真田くんは、悪くありませんから」
―――わかった。
悪いけど自信ナイ。
身体が馴染んだのか、少し落ち着いた柳生は、静かに話してくれた。
「…ダブルス、今の私では仁王くんの足手まといになるかも知れません。仁王くんは、シングルスで出るべきです」
レギュラー選抜戦。 俺は柳生と組んで、ダブルスの座を賭けて挑むつもりだった。
もちろん、柳生も同じ思いだった。
「私のために、あなたまでレギュラー落ちする必要はありません。皆、あなたを惜しがっていますから。私だって嫌です」
―――真田が言うたんか?
威厳丸出しのあの偉そうな背中を思い出して、怒りを込み上げた。 まるで柳生に、選抜戦を辞退しろとでも言っているみたいだ。
「真田くんは、私が心の内で思っていた事を代弁してくれただけですから…」
―――俺のテニスは俺のもんじゃき!誰の指図も受けんし。真田も、お前さんからも―-―!
柳生の膝を抱え上げて、さらに深く繋がる。 すっかり馴染んだ俺たちの身体は、すでに快感しか生み出さなくなっていた。
「仁王くん、あ…私、悔しい…」
柳生の、知り合ってから初めて聞いた強い意思表示だったと思う。
「あなたとテニスがしたい…!」
“常勝立海”であり続けるために、背負わなければならない覚悟。 レギュラーたる者、その重責に堪えなければならなかった。
『どんな手を使ってでも勝て』
歴代部長の最終警告とも言える文句が、頭を過る。 俺は、紳士の柳生が好きだったのに。
―――柳生、ええ作戦があるんだけど、ちと聞きンしゃい。