Face!Face!Face!!
電話が鳴った。
通話を切ると跡部はいまいましげに舌打ちしたが、幸村と目が合うと、途端に悲しい顔をした。
「何で俺が…もう嫌(ヤ)だ…」
聞き取れないくらいの声だった。
それは跡部景吾の口から出るにしては小さすぎる子どものようだった。
まだ誰も知らない跡部の一面。たぶん、聞いてはいけないやつだ。
「悪い。俺はスタジオに戻る。おまえはこのまま車で家に帰ってくれ」
幸村が少し目を逸らした隙に、もういつもの精悍な顔にもどっている。
「跡部は?」
「駅で別れる。その方が早い」
「電車に乗るのかい?キミが?嫌だよ。俺が居心地悪い。俺が電車で帰るから」
幸村が強く説得すると、心苦しそうに聞き入れてくれた。
「…わかった。自分でプロデュースした仕事だから投げ出すわけにはいかねェんだ。ごめんな」
「うん」
頑張ってと言うのは躊躇われた。結局はちゃんとやるだろうから。
それに、いい目をしている。このビューティーショーへの思い入れが伝わった。
「………」
「……そういえば、俺の撮影中なんて言ったの?」
「ベタだからつまんねーよ」
外から窓をノックされた。
跡部が窓を開けると、運転手が顔を出した。
「景吾さま。急きょ、お祖父さまの代理でご挨拶に向かう事になりました。場所は横浜のホテルでございます。ビューティーショーの方は大人たちで計らいますから」
跡部の顔色が変わった。
「何でだよ…!ビューティーショーは俺様の仕事だ。最後までやる責任がある」
責任と言っているが、素直にやりたいんだろうなと幸村は思った。
「どうかご辛抱ください」
「…なら、写真の選定は俺様がやる。いいな」
そうはいっても、かなりの枚数の写真を撮られたのだ。それが六名分ともなると選ぶのは大変だろう。
運転手が「しかし…」と言うより先に、
「時間ならつくる。必ず期日までに仕上げる。それでいいな」
「かしこまりました」
「横浜なら、幸村を乗せて行く。途中で降ろしてやってくれ」
車が動き出すと、跡部はきつく目蓋を閉じていた。
膝の上でしっかりと幸村の手を握りながら。
