Face!Face!Face!!


幸村は太ももを撫でてくる手の感触に、夢との区別をつけた。
目を覚ますと、車は停まっていて運転手もいなかった。それに、車内はぐるりと一周カーテンを引かれていて窓から外を確認できない状況だ。

「地下駐車場だから安心しろ。おまえが起きたら迎えに来てもらう」

「…起きたんだけど」

幸村が体を起こそうとすると、両肩を押さえ込まれた。
しかしよく寝た。ぐっすりと深い眠りだった。
きっと初めての撮影現場で疲れたのだ。
思えば今日いちにち、夢見心地な気分が続いている。
あの手塚がテニスの遊びに付き合ってくれたから?
慣れないコスメを使ってモデルになったから?

体の上に跨(またが)る跡部を見た。
この体勢はいつもなら恥ずかしくて顔を背けてしまうのに、完全に覚醒していないからだろうか。今ならぼんやりと、きれいな顔を心ゆくまで見ていられた。
写真の跡部の記憶が心像としてまぼろしのように見える。
彼の唇を親指の腹でなぞった。
この手で頬を触れてなでた。
そうしていると、改めてこの男を手放したくないと思う。
みるみる跡部の頬が赤くなっていく。

「なに跡部。いつもの跡部じゃないみたいだ。ふふ…」

跡部は幸村の手を払って体を離した。
下半身はすっかりその気になっているくせに、どうやって手心を加えようか迷っている。前に激しくしてしまったのを反省している。
跡部が思い切れないでいると、

「景吾」

澄んだ響きの声に呼ばれて、幸村の表情の美しさに思わず息を呑んだ。

撮影が終わって、そのまま幸村を帰す気にはなれなかった。
今日一日、ふたりの間に言葉では伝えきれないメッセージを伝えていたような気がした。ころころ変わる幸村の変化に心を乱された。
これは勝手な思い込みだが、手塚と越前にもおかしなものを一杯食わされた気分だ。
言いようのない気持ちがあふれてきて、

「…雨が止んだら迎えに来てもらうつもりだ」

跡部は片膝を立てて座ると、膝に額を置いてつぶやいた。

「しょうがないな。景吾は。地下だからわからないのに。もう止んでるかもしれないだろ?」

幸村はくすりと微笑って、跡部の手を取って引き寄せた。
慎重に太ももをを撫でた。
幸村は拒まなかった。
やがて正面に向かい合って、跡部は自身を幸村の中に沈めた。
何度となく腰を打ち付けた。
幸村の濡れた表情から目が離せなかった。

「出そ…」

追い詰められた幸村が、背中にしがみついてくる。
耳元に囁かれて、全身がぞくぞくした。
ほとんど無意識に幸村の足を抱え上げたら、まだ知らなかった幸村の遠く奥まった内部に触れた気がした。

「早く運転してぇ…」

欲情を満たした後、唐突に跡部が言った。
幸村は、まだ色気の残る横顔を見つめた。

「そうすれば好きな時におまえに会いに行ける。時間も場所も誰もいらねぇで」

跡部が真剣に運転席を見据えている。今にもハンドルに手をかけそうな強い視線だ。
本気で幸村を抱きに迫ってくる時に見せる、ちょっと危険な目に似ていた。

(そういえば、この前した時はひどくされて怒ってしまったんだ)

真面目にやれよ、と怒鳴ったはずだ。
跡部は不本意と不服を訴えようと歯を食いしばったような顔をしていた。

(あれはほんとうに真面目だったんだなあ…)
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