Face!Face!Face!!


帰りは雨が降っていて、跡部家が送迎車を用意してくれた。
手塚、越前に続いて当然のように幸村も乗り込もうとしたのを、追いかけて来た声に止められた。

「おまえは神奈川だろ。もう1台出すから待ってろ」

跡部が傘を差し掛けた。
幸村が振り返っても、彼はこちらを見ない。シャツも前髪も濡れている。走って来たのだろうか。

「じゃあな手塚。ご苦労だった」

「ねえ、仕事したのは俺なんだけど」

納得いかない越前をよそに、跡部は助手席の手塚に次のテニスの試合を一方的に申し込んでいる。新しい技を見せてやるとか、首を長くして待っていろとか。
手塚はむっつり黙って即答しない。

「首を長くしてるのは跡部さんの方じゃん」

越前が冷めた様子で、ぽそっと言った。
同感だと思った幸村は、半分開けた後部座席の窓の中に笑いかけた。

「俺たちは跡部の目に映らないらしいね」

「はぁ…一緒にしなくていいから」

「キミの写真見たよ。跡部に負けてない」

「どうも。年上を遊びに誘ってる感じでっていうから」

「ふふ、あれは誘われてしまいそうだ」

越前が目を丸くして何か言おうとした時だ。
差し掛けられていた傘が無くなって、冷たい雨が幸村を濡らした。反射的に跡部の隣に一歩寄る。

「そろそろ出すぞ」

絶対わざと傘を外したのに、跡部はこちらを見向きもしない。
助手席の窓が閉まりかけると、幸村は跡部の肩越しに顔を出した。

「手塚、今日はありがとう。楽しかった。今度はゆっくり"試合"やりたいね」

「ああ。撮影も上手くいったようだな」

「うん。不二にもよろしく。じゃあ、また」

車が出ると、跡部が歩き出す。
雨脚が強まってきて、幸村もくっつくように肩を寄せた。
そこへ、一台の車が二人の前で静かに止まった。この車が神奈川の自宅に行かないだろう事は明らかだ。
幸村の選択を迫るように雨はさらに強くなってきた。

「怒ってるかい?それとも…」

「どうだか試してみればいいじゃねぇの」
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