Face!Face!Face!!


幸村は、淡々とカメラマンのリクエストに応えていた。
いろいろなポーズや表情を撮った。この中から選りすぐった3パターンを採用するという。硬かった表情も少しずつほぐれてきた頃、

(ぁ、跡部来てる…)

スタジオ入り口で、ズボンのポケットに両手を突っ込んで佇(たたず)んでいる。
少し腰を突き出すようにして、偉そうに見えるのが跡部らしくて格好いい。

(ほんと…そのまんまなんだから)

幸村は指示通りポーズを変えて、さり気なく跡部を見た。すると、色気のある眼差しとぶつかってしまった。
それは視覚的、聴覚的にも強く心に迫ってきて、幸村を怖気づかせた。はっきりと、ベッドの上の跡部を連想したのだ。

ーーーほら、もっと来いよ。

例えば体を繋げている最中に、跡部は目を爛々と輝かせて迫ってくる。幸村は本気で、「これ以上どうしろというんだ」という困り切った顔で見返した。
それもそのはず、すでに二人の結合部はしっかり合わさっている。幸村のナカは跡部でぎゅうぎゅうだった。
これ以上距離の詰めようがない。だから勘弁してほしくて見つめた。それなのに、

ーーーは…できるじゃねぇの。

跡部は満足そうに抱き直すと、ベッドの上は彼の独擅場になった。
その時の跡部の欲情を隠さない表情が文字通りセクシーで、幸村は体の奥がきゅんとなるのを意識した。

しかしそこは幸村で、動揺を顔に出さない。
今はリップスティックを片手に、小首を傾げてみせた。

(ん?なんか言ってる…?)

跡部の唇が何を伝えているのか、この距離からはわからない。わからないが、やられっぱなしは性に合わない。
そういえば、跡部のリップカラーはルージュだったのを思い出す。それに対抗するつもりはないが、幸村もくすみピンクのリップの先を見せつけた。
ちなみに隙間時間に調べたら、カラーのMauveは薄紫色。フランス語で「葵」を指す。
太陽に向かって真っ直ぐに伸びる、気高く清らかなイメージだというから気に入った。最初は乗り気でなかった撮影にも気持ちが入っている。
やるからには跡部のようにはいかなくとも、跡部財閥の名に恥じない結果を残したい。

カメラマンの「OK!」の声がかかる。
終わってみると、開放感とちょっとした高揚感に包まれた撮影だった。
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