Face!Face!Face!!
幸村は、重ねられた手をはたけなかった。
我慢ならなくて少しでも身じろげば、跡部は手に力を込めてきた。
「試合しろって言ったのはそっちだろ」
早く越前と手塚が戻って来ればいいと思う。
跡部がいつまでも黙っているから、うっかり顔を見てしまって後悔した。
「なにその目…?メイクしてる」
「いや、もう落としてきた」
「でも…ぁ…」
この目元は駄目なやつだ。
メイクでないとしたら、自然の色気なのだ。それに、少し目尻を下げるような優しい表情を見せてくる。
思い当たるものがあって、胸の鼓動が速くなった。
「っうか、メイクなんてたいしてしねぇよ。俺は撮り終わったから見せてやる。細かい編集はまだだが…少しは参考になるだろ」
跡部は重ねた手を離して、クリアファイルを差し出した。離れてみると、名残惜しさを感じるくらいに幸村は跡部と良い関係を築いていた。
ファイルに挟まっていたのは、三つのポーズをとった跡部の写真だ。正直、見せられたところで同じことをできる気がしない。
それに、跡部はちょっと得意げにしているが、幸村はこの写真を見てもそれほど驚かなかった。
(そのまんま…)
だからといって、つまらないのではない。
自然体でここまで際立って見える人間はそうはいない。
いつもの跡部。よく知ってる跡部。幸村は飽きもしないで、何度も何度も三つの跡部を見比べていた。
「チッ…つまらなそうな顔しやがって…」
「そんなことない」
即答したのは無意識だ。
(また…そんな風に見せつけて)
写真の恋人に話しかけた。
「こういうのって、何度も撮り直しとかするんだろ?カメラマンさんの注文に応えるのは難しそうだ」
「注文?俺様は一発撮りだぜ。自然体でというからそうしたまでだ」
「跡部はなんでもできるなぁ。モデルでも成功しそう。あ、俳優でも」
「今日はずいぶん褒めるじゃねーの」
褒めるんじゃない。惚れてるんだと言って返したい。
もう一度、勇気を出して跡部を見た。
「そ…の目はよくないと思う…ここではなにもしてあげられないから…」
幸村は鉛筆を取ってノートに線を引いた。
今の幸村は死角だらけで、跡部のリターンエースは確実だ。
せめて口だけでも主導権を握っておきたいのが幸村の心理だった。
「場所…考えなよ。手塚たちに変に思われるだろ」
頭の中ではベッドの上の跡部でいっぱいのくせに。
