Face!Face!Face!!
幸村が次の一手を考えていた時、平静で慎み深かった手塚とのテニスコートが乗っ取られた。
「楽しそうっスね」
幸村のすぐ後ろから顔を出したのは越前だ。
この青学のルーキーは、不意の声が耳元に近すぎて動揺した幸村にもお構いなしだ。
「これ、ここに打てばいいじゃん」
「ちょっと…強引すぎる」
「いいじゃん。幸村さんならいけるよ」
幸村は、文字通り上から目線の越前の顔を見上げた。越前は幸村の肩越しにふふんと笑った。
「はい。部長の番っスよ」
心なしか手塚の眉間が寄ったのを見て、幸村の方がハラハラさせられる。
そこへ、この場をさらに掻き乱す人物がもう一人。
「アーン?何をもたもたしてんだよ手塚。こんな球、さっさと返しちまえ」
手塚の肩に肘を置いた跡部が、身を乗り出して鉛筆を取った。
「あ!俺は部長とやってるんスから、跡部さんは引っ込んでてくださいよ!」
「はっ!手塚だったらこうするに決まってんだよ!」
「俺だって、幸村さんなら絶対諦めないの知ってるし!」
いつの間にか、試合は越前と跡部に乗っ取られてしまった。
そこへ、部屋を訪ねたスタッフが「越前リョーマ」を呼びに来た。聞こえないはず無いのに、越前は動かない。
「越前」
手塚の呼びかけにも無視を決め込むつもりだろうか。
跡部も跡部だ。手塚そっちのけで越前に感情を逆なでされている。
「…越前!」
とうとう手塚が静かに怒鳴って立ち上がると、二人は鉛筆を持つ手を止めた。
「ちぇっ…あ、幸村さん。いいとこなんスから俺が戻るまで負けないでくださいよ」
「ちょっと、俺は手塚と…」
越前は手塚の後を追いかけて行ってしまった。
「聞いてないよ」
幸村は、残った跡部に不機嫌をぶつけた。
跡部はさっきまで手塚が座っていた椅子に足を組んで座った。
「手塚は保護者だぜ。撮影には参加しない。誘いはかけたが、青学からは不二と越前が出るからそれで勘弁してくれだと」
「…不二は?」
「別日に撮る。一度に何人も撮れねぇよ。何だ。不二がいないと不安だって顔だぜ」
「別に。俺も手塚みたいに断ればよかった」
「おまえに断る権利はねぇよ」
跡部が鉛筆を動かした。
「手塚はいきなりそんなやり方しない」
「今は俺の相手しな」
「ぼうやなら、ぜったい無理やりクロスに…」
「おまえが、俺の相手すんだよ」
「…………」
二人は喧嘩の真っ最中だった。
