故意(恋)の風紀違反
高校に進学すると、宣言通り真田は風紀委員になった。まるで校内警察官のような風紀委員は顔が広い。
特に真田は、先輩だろうが女子だろうが、時には教師にも遅刻や服装チェックに余念がない。
この日、幸村は家を出るのが少し遅れた。
なかなか開花しなかった庭の花が咲いていたから、朝の支度より先に庭に出て、時間を忘れて愛でてしまったのがいけなかった。
しかも前夜は、真田と遅くまでエッチな電話をしていた。二人とも携帯電話を持たせてもらって、さっそくこんな事に使っている。
(真田の声で何回いったんだろ…)
低音でも聞き取りやすい真田の声は、幸村の記憶の奥底にずっと残っている。
ーーーそうだ幸村。そのまま足を開いて全部俺に見せてみろ。
予鈴を聞いたのは昇降口だった。
授業に間に合うと確信すると、幸村は手ぐしで髪を整えた。
「遅刻かと思ったぞ」
下駄箱の陰から真田が音もなく現れて、落ち着いてきた心臓の鼓動がまた速くなった。
「うん、平気…」
返す言葉に詰まるくらい幸村は動揺した。
(平気ってなんだよ…)
心の中でつぶやいた。
上履きを履いて顔を上げると、帽子のない真田が見下ろしていた。
(真田知ってる?女子がかっこいいって言ってたよ。…違反者リストにある女子の名前教えて)
幸村は黙って真田の横をすり抜けた。
昨夜の恥ずかしい電話もあって顔向けができない。
腕をつかまれて引かれた。
背中に下駄箱、目の前に真田。
(…こういうの、どこで覚えてくるの)
少し遠くで、バタバタと教室に急ぐ生徒の足音がする。
「離して。遅刻じゃないんだからいいだろ」
真田は幸村のシャツのボタンを上二つ外した。
そこに指を引っ掛けると、顔を寄せて二度、息を吸って吐いた。
ぞくぞくしながら、幸村は真田の次の言葉を待った。
「残念だが風紀は平等に守ってもらうぞ」
幸村はネクタイを忘れた。
いや、忘れて"きた"。
