こねまわして!愛ス

仁王と二人、病室に残った。
あくびを一つした彼と、目が合った。

「なん?」

「行かなくてよかったのかなーとか思って」

自分で自分を指差した仁王に、俺はうなずいた。

「メンドイ。柳生に任せた」

「ほんとに?」

「…二人で行ったらおまえさんが一人になるし、二人で残ってもお前さんが一人になる」

ああなるほどと思って、そんな状況になった病室を想像してみた。

「仁王が一人で行くって選択肢はないんだ?」

「ナイ。メンドイ」

「ふふ、ありがとう」

仁王は、うつむきながら髪をかいた。
滅多に見せない彼の照れ隠しだ。
柳生の前では、頻繁に見せるのかな。
それに、と仁王は言った。

「柳生のやつ、俺に目配せ一つしないで、とっとと行きやったし」

ため息をつく仁王も貴重だ。

「だったら、君が勝手に付いていけばよかったのに」

「それはナイ。アイツの方から俺を意識してもらわんと意味ナイ」

なんだ、やっぱり俺より柳生じゃないか。 仁王も案外、束縛したいタイプだったりして。

「セックスはした?」

「……お前さんはそればっかやの…」

「だって付き合ってるんだろ」

「お前さんたち夫婦と同じにされちゃ困る。さっきの…行ってきます行ってらっしゃいっての、すごい、イイ…」

仁王は、髪をくしゃくしゃした。
俺には意味がわからなかった。

「タオルのやりとりとか…できんよ、ふつう」

「だってセックスできないんだ。真田の頭は部活でいっぱいだし、俺を欲しがればいいと思って」

あの時はそこまで考えていたつもりはないが、真田が汗を拭うのを見ていたら、そうなればいいと期待した。 なのに、真田は顔色一つ変えずにタオルを肌にあてたのが気に食わない。

「しかも、さっき来てさっき出ていったし。なんなんだよ。ムカつく」

だから、ああそうですかって、わがまま言うのをグッとこらえて、送り出してやったんだ。 俺は、真田よりは人間が大人だからね。

「それで、行ってらっしゃいかい。エエの」

「よくないだろ!なんにも会話ないんだぞ。あのバカ真田」

「エエの…」

何がいいのか、仁王は感心したようにしみじみしていた。
4/12ページ
スキ