故意(恋)の風紀違反


退院の前日、テニス部レギュラーがそろって面会に来た。

「真田は」

幸村より先に口に出したのは柳で、きょとんとした幸村を見て、やさしく微笑った。

「…とおまえは気にしているだろう?弦一郎は部を空ける訳にはいかないと言い張って、自主練を兼ねて残っている。また明日会おうと言っていたな」

「別に…あの時はちょっと弱気になってただけだから」

「なら、そんな残念そうな顔をしてくれるな」

「………」

思い出すのは手術直前にメンバーが駆けつけたあの日。
その中に真田の顔だけがなくて、幸村は思わず彼を探した。会えないまま手術室に向かった心細さは今も覚えている。
でも今度ばかりは自分が悪いと思っている。

(変なこと言ってしまったから逃げられたかな)

もしかすると、明日も会えないのではないか。
テニスコートにひとりぽつんと立ち尽くす自分の姿を想像して、また心細くなる。
そんな不安を吹き飛ばすように、幸村は意地を張ってみる。

「…真田は副部長だろ。自分のやるべき事をしっかりこなしてもらわないと困る。俺の退院祝いなんかにわざわざ顔を出す暇があるなら誰よりも練習に励むのは当然じゃないか」

言い過ぎた感じはしたが、真田に対してはいつもこれくらいの態度が普通だったはずだ。
ちらとメンバーの反応を見ると、

「いつもの幸村が帰って来た!」

喜んでくれた。
少し複雑な気持ちになったが、誤魔化せたならそれでいい。

(俺ってなんであいつにだけ、こんなに強く当たるんだろ)

今までずっとそうだったとしたら、大変なことだ。
けれど、これが期待や好意の裏返しだということに幸村は気づいていない。
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