故意(恋)の風紀違反



ーーー元気になったらたくさん悪いことしたいんだ。

入院中、真田に向けて幸村がよく口にした。
ふだん羽目を外す行動をしない幸村だったから、長い闘病生活に嫌気が差してその弾みなのだろうと思った。

「それもいいだろう」

真田にとって、幼い頃から幸村は"いい子"である。
幸村の言う事やる事に、真田は兄に憧れる弟のようについていった。
中三になってもその基本は変わらない。
だからこの時も電話越しで、

「その時は俺が付き合おう」

当然といった口振りで真田は頷いた。
幸村のことだ。悪さのうちに入らないかわいいわがままに違いない。
病気で弱っている"兄"の役に立ちたい気持ちだった。

別の日、受話器の向こうの幸村はひどく弱っていて、

ーーー毎日こうしているとね…

途切れた声に、真田は懸命に耳を傾けた。

ーーーキミが懐かしくて仕方ないんだ。

週に一度は面会に行っているから、少し大げさのような気もする。
本当は毎日顔を見に行っても飽きないが、幸村の家族の手前遠慮している。

「また土曜日会いに行くぞ」

ほうっと息を吐く幸村を想像して、入院生活とは余程孤独なのだと思った。

ーーーそうじゃぁなくてさ…

そして幸村は、夢のような言葉を紡いでくれた。

ーーー言うことを聞かないこのカラダを、真田。…キミにおもいきり触ってほしくなったりするんだ。とても激しく、俺が泣き尽くすまで、ね。

「それはどういう…」

受話器を握る手が震えた。

ーーーうん、懐かしいよ。とても。毎日顔を見ないとさみしくなるくらいには。もう電話じゃ足りないんだ…俺の言う悪いことってね、そういうことだから。

「幸村、俺は…」

テレフォンカードの残高不足だろうか。途中で通話が途絶えた。
この頃まだ二人とも携帯電話は持っていなくて、真田は夜遅くまで固定電話で話し込んで家族に叱られた。幸村も看護師に見つかって病室に連れ戻されたことがある。
またかけ直してくるかとしばらく待ってみたが、ついにそれはなかった。
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