故意(恋)の風紀違反


その事が終わって真田が薄目を開けると、先に起きていた幸村が身なりを整えている。
なんとなくソワソワしているのは、真田が目覚める前に元通りにしてしまいたいからだろう。
これはせめてもの幸村の照れ隠しだろうから、真田は心で観察することにした。
好きな相手の着替える仕草とは、見ていて飽きないものだ。

自分の制服を着終えてほっとした幸村が、次に手を伸ばしたのは真田のブレザーだった。
ブレザーの埃を手で払い、鞄から携帯用の洋服ブラシまで取り出して、伏し目がちに手入れを始めた。 
まんべんなくブラシをあてて、時折目の高さにもっていく。口もとが楽しそうだ。
これは黙っていられない。

「いらんぞ」

「いいから」

幸村は背を向けて座り直すと、ブラシをあてるのを止めない。
真田は横向きに寝そべって肘をつくと、そんな幸村の様子をじっと見つめた。
きちんと身なりを整えたつもりでいるが、後ろ髪が変にハネている。これが自分の重みを受け止めた形跡であると思うと、真田は心の中でフッと笑った。

「はい。できたよ」

手渡されたブレザーを受け取る。
   
「小さいことかも知れないけど、こんなことでも恩返しのつもりだ。これからもいろいろするつもり。俺の気が済むんだから、気にするなよ?」

幸村は立ち上がってズボンのベルトを絞めた。
その様子を見て、すぐに違和感に気づく。

「少し痩せたか?」

「あー…そういえばそうなのかな」

幸村はベルトの穴を見た。

「穴ひとつ分くらい大したことないよ。別に元の穴でも平気なんだ。なんとなく、ね。よく気づいたね?」

「こう…ベルトの引き具合が」

真田は着替えながら自分のベルトを締めて見せた。

「こんな小さな変化に気づくなんて嫌になるなぁ」

幸村は、でも嬉しそうに微笑んで体育倉庫の重い扉を押して外に出た。
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