まだ誰のものでもない
大石先輩のお説教が終わった。
「それにしても広いな。跡部への配慮か…?」
「ワガママじゃないスか」
「はは…とにかく俺たちは部屋に帰るぞ」
「でもこの部屋の主たち、カードキーここに置きっぱなしで出て行ったんで」
部屋はオートロックだ。
二枚並んで置いてあるのが気に入らなくて、カードキーを一枚取って大石先輩に渡した。
「これだと閉め出されちゃうので、俺が二人が帰って来るまで留守番してまーす」
「でもしかし勝手に…」
やがて大石先輩はため息をついて、しぶしぶ留守番の許可をして帰って行った。
条件は、「二人のうちのどちらか一人でも帰って来たら長居はしないこと」だって。
大石先輩は全然わかってない。
俺はまたごろんと横になって目を閉じた。
こんな大きくて心地いいソファー、使わないともったいない。
「これならベッドじゃなくても十分寝れるじゃん…」
あ、と嫌な想像に繋がって気分が悪くなった。
よくないけど、幸村さんの寝室をのぞいた。
寝具はちゃんと整えてある。
パジャマまで畳む人だった。
完治はしても、サイドボードにまだ薬があるのは仕方ないとして、
「うさいぬ」
なんとなく、誰かにあげる用な気がした。
「…別に。そこまで好きなわけじゃないけど、くれたらぜったい好きになるし」
キーホルダーに伸ばしかけた手を引っ込めた。
留守番なんて買って出るんじゃなかった。
せめて一人で帰ってきてよ。
