まだ誰のものでもない


俺は何を見せられている?
トレーニングセンターから戻ってみると、越前に跨る幸村がいた。
衝撃的な場面ではあるが、それよりも目が離せなかったのは幸村の横顔だった。
癖毛がこんなに綺麗に似合う男はそうはいない。
前から意識していたが、やっぱりだ。

「越…前…ちょっと…」

「いいじゃん。あと少し」

てっきり幸村の方が積極的にいっているのかと思ったが違うのか…?

「おい。今帰ったぞ幸村」

「跡部、おかえり」

この状況を無視した俺も俺だが、幸村も幸村だ。
まるで、「ちょっとまってて」という程度の困り笑顔だ。だがそれは、装いだろ?

「ねえ、さっきから邪魔しないでくれない?」

越前はぎゅうっと幸村を抱きしめて、完全に二人の体は密着した。

「間違うんじゃねぇよ。ここは俺と幸村の部屋だ」

「その幸村さんがOKしたんだからいいじゃん」

「俺が帰ったんだからそこまでだ」

俺の不機嫌が伝わったのか、幸村が顔を上げた。

「ほら、そろそろ離してもらおうか。重いだろ?」

「別に。これくらい全然平気だし」

「ふふ、ぼうやの力が強いのはわかったよ」

「当たり前でしょ。あんたと張り合って試合に勝ったのは俺」

越前の手が幸村の頬に触れようとした。
俺は幸村の腕を取って引き離した。
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