家族のカタチ


「はたかれたのはこれで二回目。俺、親にはされたことないんだ」

一度目は真田に。 
そして二度目は跡部の母、瑛子に。

「ふふ…たぶんこっちのが痛いな。これは俺のためだけじゃないから」

「俺だってねぇよ。聞いて驚いたぜ」

「ふふ、景吾の顔には無理だ」

「ばか。おまえに期待してんだよ」

跡部は幸村の着物の前を開いた。
乳首は薄桃色で血色がいい。
吸った。

「ぁ…」

「かわいいぜ。俺とBabyと、どっちがいいか」

「ばか…」

「こっちは俺だけだな」

これも吸った。
元気がよくてよかった。
後ろも探った。
自分で慰めたなごりを感じたが、黙っておく。

「うん…」

何も確認していないのに、幸村は返事をした。
頭の中では、「挿れてもいいか」の跡部の声が聴こえているらしい。
さみしい想いをさせて悪かったなと心で詫びた。


子どもを連れて部屋を出ると、廊下の角を曲がったところに切原が座り込んでいた。 
幸村が目をかけている年下の"家族"だ。

「あの人、大丈夫っすよね…」

いつもは挑発的な瞳が潤んで、探るように見上げた。
なかなか可愛いところがある。

「当たり前だろ。おまえも今度ウチ(氷帝)に来い。いつ来たっていいんだぜ?」

不思議そうにする切原の髪をわざとくしゃくしゃになでた。

「家族だろ。アーン?」

きょとんとした切原は礼儀もそこそこに、嬉しそうに駆け出して行った。

「大丈夫ッスよ!心配いらないって!氷帝に行ってもいいって!ね、今度行きましょうよ!」

やがて切原の声が筒抜けで聞こえてきて、跡部は面白くて思わず吹き出した。
どこかで肩を寄せ合って集まっているだろう立海の"家族"を想像した。
もしかすると、今になっても跡部と別れさせる算段をつけているのかも知れない。

立海の門を出る。
おとなしくしていた腕の中の子が背中を反らした。
抱え直すと、小さな手をぱたぱたさせて、頬にぴたりとあたった。

「アーン…?俺様も叩かれろってか。なかなかやるじゃねーの」

見下ろせば、何事もなかったように跡部の胸に顔をうずめている。

(そうさな…どうせ叩かれるなら、あいつに) 

空を仰げば、月が綺麗な夜だ。

「さあ帰るか。今日がおまえの氷帝デビューだ」



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