家族のカタチ


自室に入ると内鍵をかけてベッドに倒れた。
スマホを見ても、跡部からの返事はまだ無い。

「見てよ…」

さみしくなると、思い出す。
スーパームーンの夜は格別だった。
二人とも、いつになく積極的に相手の体を自分のものにしようと絡み合っていた。
最後の三回目になる頃には、幸村の頭はぼんやりとして、跡部の色気たっぷりの表情もあまり覚えていないのが残念なほどだ。
そんな跡部の愛情を嫌というほど受けとめる中で、はっきりと記憶に残った瞬間がある。

(最後の…跡部の質感がいつもとちがったような…?)

幸村の体内は敏感にそれを覚えていて、今また熱い記憶がぶり返す。
もちろん幸村はこれを待っていて、あわてて下着に手を入れた。
さみしくなると、跡部を思い出してこうすると気持ちが落ち着くのだ。

ーーー出る…っ!

あの時の跡部の余裕のない声ははっきり覚えている。
今の幸村も、記憶の中の跡部と一緒に上り詰めるはずだった。
が、一滴も出ないのにはショックを受けた。
跡部を想って出ない事など一度もなかったからだ。

(どうして…!こんなに気持ちいいのに…それに、勃たないなんて!)

幸村はこわくなって布団を被った。
跡部から返事があったのは、こんなタイミングだった。

『次の土曜日会えないか?精市さえよければまた』

跡部が"精市"と呼ぶ時は、「抱くつもりでいるからそのつもりで」という意味が含まれている。
それをもって、跡部を受け入れる体の準備をする苦労も幸村は好きだった。
しかしたった今から、待ち望んでいたはずの返事が不安に変わった。
実際、後日何度か試してみても結果は同じだった。

(だめだ!俺、跡部に勃たない…!きっと跡部を拒絶する…)

幸村は言い知れぬ体の変化に戸惑った。
自分の体が何かを訴えようとするのを、隠そうとするのに必死だった。
誰かがドアをノックした。

「幸村くん、俺、俺。おかゆ、つくってきた」

丸井なら、仕方ない。
ドアを開けた。

「悪ぃ。俺も」

ジャッカルが申し訳なさそうにつるりと頭をなでた。
聞けば、仁王によって「幸村は風邪引いた」という事になっている。
はっきりそう触れ回ってくれたおかげで、真田と柳も「寝かせておいてやろう」で済んだようだ。

「柳生があとで顔だすってさ。ほら、比呂士は医者のタマゴだろぃ?それに仁王のイタズラをちょっと疑ってる」

丸井のおかゆが体にやさしかった。
ジャッカルの笑顔があたたかかった。
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