家族のカタチ



跡部は高校生活の傍ら、家業の継承の準備にも勤(いそ)しんでいる。
普通の高校生カップルのように、ちゃらちゃら簡単に会えるわけではなかった。
もちろん幸村も理解していて、跡部を困らせる行動はしなかった。それに、今ではこのじりじりした気持ちを楽しんでいる節がある。
今日も幸村は、連絡手段のスマホを傍らに置いて返事を待っていた。

幸村は、"立海"という家族といっていい仲間とひとつ屋根の下で暮らしている。
個性的なメンバーは、それぞれの長所と短所を補い合って生活を共にする良いチームだった。
恋人の跡部もまた、"氷帝"という家族を築いて暮らしていた。

夕食時の事だった。
昼間からなんとなくだるい一日だった。
風邪の引きはじめかな、と軽い気持ちでいた。
柳と柳生が用意してくれた料理はとてもおいしそうだ。
二人とお喋りして、煮物の鍋を覗き込んだ瞬間、胸の奥から込み上げる不快感に顔をしかめた。

「幸村くん?」

「顔色がよくないな」

幸村は心配する二人に笑顔で取り繕うと、洗面台に駆け込んだ。
えずいても、何も出ないのがかえってもどかしい。
ムカムカするのを落ち着くのを待っていると、赤也がやって来た。

「あれ?どうしたんスか?そろそろ夕飯ッスよ!」

「ああ、すぐ行くよ」

幸村が赤也の横を行き過ぎようとした時、体が揺れた。

「ちょっと…!大丈夫ッスか?…て、なんか雰囲気変わりません?こう…ヤッた後の女の人の…」

せっかく倒れかけた体を支えてくれた赤也には悪いが、コツンと頭を叩いてしまった。

「もう!冗談ッスよぉ…ただ、ますますキレイ…じゃなくてカッコよくなったなって思ったのは事実ですけど…」

「知ったような口を利くものじゃないよ」

赤也を追い出すと、鏡に映る自分の顔を見た。
思わぬ赤也の指摘に動揺したが、すぐに冷静を取り戻す。

(まったく…赤也のやつ。どこであんな想像を覚えてくるんだ。だいたい、俺が最後にシタのは)

幸村は、スーパームーンの夜をよく覚えている。
半年ぶりの跡部とベッドを共にしてから、もう三週間以上経っていた。

(こんなに間をおいてからくる色気があるもんか…)

そうしているうちに、胸のムカムカもおさまった。
代わりに、跡部との情熱的な夜を思い出して別の悩みが幸村を困らせた。
食欲はない。食べればまた吐きそうな気もした。
ちょうど手を洗いに来た仁王をつかまえて、

「今夜は早めに休むけど心配しないで」

特に人の行動にうるさい真田と柳に伝えるように頼んだ。

「プリッ」

仁王なら幸村の隠れた気持ちを汲み取ってくれるはずだ。
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