家族のカタチ


幸村はわずかな抵抗の後、すんなりと跡部を体内に受け入れた。
二人はすっかり鍵と鍵穴の関係で結ばれている。
跡部はいつも感謝の言葉を忘れない。

「いつもありがとな」

「ン…いいんだ…」

おそらく幸村は前日から何も食べていない。
こうなる事を予定して、抜かりなく体の準備を整えてくる。
だから跡部も、最上級のもてなしを幸村へ尽くす。
テニスを辞めた今も、体づくりは続けているのはその為だ。幸村の綻(ほころ)ぶ顔が見たいから。

「ああ…今日のために生きてるって感じがする」

「大げさなやつだな」

「ううん、そんなことない」

「なら、心配いらない。わざわざ寂しい言い回しするんじゃねぇよ」

跡部が腰を使って律動すれば、幸村も跡部の体を離すまいと足を絡めてくる。

しかしこの日、二人は禁忌を破ってしまった。
跡部が半年の留学から帰って来た反動だったといっていい。離れていた二人は、織姫と彦星のように再会を喜びすぎてしまった。

「出る…っ!」

「うぅ…けい、、ご」


目が覚めた。
窓から差し込む月明かりが妙だ。
レースを開けて外を覗けば、大きすぎる満月が間近に迫っている。
跡部はしばらく、神秘的な月の姿に心を奪われた。

「俺にもよく見せて?」

まだ眠たそうな目をした幸村が呼んだ。
跡部は幸村の手を引いて窓際に近付けてやった。
ことん、と幸村は肩にもたれた。

「すごい大きい。そういえば、スーパームーンって今夜だったよ」

「これがそうか」

「都会のビルの夜景も今夜ばかりは引き立て役だね」

たしかに、眼下に見下ろす見慣れた都会の点々とした明かりが、飾りのように瞬(またた)いている。

「スーパームーン…どこかで聞いたぜ」

跡部が記憶を手繰るようにつぶやくと、よほど疲れさせたのだろう。幸村はうとうとしている。
跡部は幸村を横抱きにすると、分かれた前髪から見えた額にキスをした。
幸村をベッドに横たえる時、ナイトガウンの裾がめくれて、まだ情事後の生々しさの残る太腿が跡部の目に触れた。
離れていた月日のせいもあるだろう。
この夜はやけに幸村を自由から遠ざけたかった。
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