家族のカタチ
サングラスを外せば、途端に明るい世界が広がって、視界に飛び込んでくるのは眩しい笑顔の恋人がいて…
「あーとべ!」
「遅ぇんだよ…ほら」
「あは!ごめんて」
せっかく右手を差し出したのに、それを無視して腕に絡み付いてくる。
あんまり勢い余って来たから、跡部は少しよろけてしまう。
「元気そうじゃねぇの?」
「うん」
跡部は視線を落として、猫のように腕に擦り寄る幸村にそっと笑いかけた。
高校三年になって、幸村との付き合いも三年目に入った。
付き合ってみると、跡部の思っていた幸村のイメージはドミノのようにひとつひとつ倒れていった。
それはがっかりする方向ではなくて、むしろどんどん惹き込まれていく方向に倒れていった。
「いい服着てンな」
「景吾に負けないのを選んでたら遅刻した。すれ違う人みんながキミを見るから。少しは俺にも分けてもらわないと」
口をとがらす幸村に、思わずぷっと吹き出した。
どうやら跡部自身も、この三年で違う人格に変化してきたようだ。
「まったく人を待たせておいて」
コツンと頭を小突いてやる。
「人様を意識してどうするよ。アーン」
「だって」
むっとした視線とかち合う。
「かわいい顔すんじゃねぇよ」
幸村の形のいい額に唇を落とすと、サングラスをかけた。外で会う時、跡部がいつもそうするのは、これなら幸村を遠慮なく見つめられるからだ。
幸村は、跡部財閥の跡取りの顔を世間の目から隠していると思っているが。
