結婚しようよ!
彼氏になったからといって、すぐに何かが大きく変わるわけでもない。
いつも通り登下校も一緒だし、赤也の赤点の面倒も見ている。
本気でテニスをすれば、俺はやっぱり五感を奪われるし、幸村の花壇は冬の寒さにも負ない花でいっぱいだった。
「ああ…春が待ち遠しいな」
花壇の植え替えをしていた幸村が白い息を吐いた。
「春になれば高校生だな」
「あれ。真田って…ここ(立海)だよね?」
「何を言ってるんだ。当然だろう。おまえも、そうだろう…?」
二人で苦笑した。
互いの進路先も聞けないくらい臆病な恋をしていた。
もっとも、風のたよりに聞き及んでいる。
もしも外部受験すると聞いたなら、付いて行った。
「これから先に、なにがあるかな」
「ある。おまえとは」
なにかな、と楽しそうにする幸村の手を引いた。
「こら。土がつくよ。こわい顔するなら行かないから」
「む、すまん。そんなつもりではなかった」
俺は、ふうと白い息をついた幸村の横顔をそっと見つめた。
