結婚しようよ!
「知ってるかい?ここ数年低下傾向だった成功率が上がっているらしいよ。蓮二が言ってた」
「そうだろうとも。俺の長年の涙ぐましい努力がようやく実を結んだのだからな。あの木も果たすべき本分を思い出したのだろう」
両想いを確認した俺たちは、三学期の始業式を迎えていた。
放課後の幸村の教室で、あと何日書くともわからない部誌を二人で開いていた。
「あっは…!キミがあの木に自信を取り戻させた?真田がジンクスに頼るとは思わなかった」
「立海生らしくていいではないか。俺はこの学校が好きだからな。在学中に必ずここでと決めていたぞ」
「ふうん…真田がね。意外…」
「幸村…」
幸村の反応に不安になっていると、
「やめて。俺、おまえのしおれた顔は見たくない」
手のひらで顔面を隠された。
「…うれしかったよ。だから堂々としてろよ。俺の…彼氏だろ」
「彼氏か」
「何度も言わせるなよ。…恥ずかしいから」
俺は幸村の手を取って指を絡めた。
一本一本、確かめるように。
自然、目と目があった。
「ぁ…赤也のやつ、また漢字まちがえてる。ほら、ここ…」
はぐらかそうとする幸村に、キスをした。
机を挟んでのキスだから、あまり上手くないけれど。
俺は、緊張でかたくなった体をなんとか椅子にもどした。
「どこだ?まったくあいつはいつまでたっても」
とても幸村の顔は見られなくて、震える手で部誌を引き寄せた。
その手に、温もりのある手がかさねられた。
「ずっとこんな日がきたらいいなと思っていたよ」
泣いてしまいそうな、か細い声で幸村が言った。
「がんばってくれてありがと…」
半分泣き顔の幸村に、俺は何度も首を振った。
