落花流水〜ハジメテ〜



初回の会合で熱い視線を注いできたのは幸村の方だった。跡部は最初、変なやつだと思って相手にしなかった。
あるとき、試しに見返してみると、気の毒なほど狼狽える幸村の様子が跡部の心を動かした。
会合が終わって、他の部長たちに混じって帰ろうとする幸村の行く手を塞いだ。

「さて、ひたすら俺様を見つめていたワケを聞こうじゃねぇの」

相手は王者立海の部長、幸村精市だ。
挫折と敗北を許さない鉄の掟を掲げるチームを束ねるほどの実力者だ。
そんな幸村が自分に好意をもっている。
これを掌握すれば得がありそうだと思った。

「どうした幸村。答えられねぇのか?それとも自分の気持ちを認めたくねぇのか?」

逃げるならそれでもかまわないと軽い気持ちで訊いた。

「わかってる。俺は跡部が好きなんだ。カッコいいからね。はじめから見ているだけのつもりだったんだ」

「何だと…」

「まさかこうしてキミから来るなんて思いもしなかったから。気づかれてもいいやって投げやりな気持ちで見つめていたよ」

あまりにもあっさりと気持ちを打ち明けた幸村に、返す言葉が見つからなかった。

「でも安心してくれ。こうなってしまったからには次からの会合は参加しない。ただ、ほんとうに好きなんだ。この気持ちは嘘じゃない。変な気にさせてごめん」

「待て!」

「…やめてくれないかい?そんな風に引き止めるのは。一応謝ったんだから、許してくれないかな」

掴んだ手首のパワーリストの存在が、立海の強さを物語っている。

「…楽しかったよ。いい息抜きになった」

「なら次も来い。その次もな」

「なにするんだ、跡部…!」

「俺様といたいなら、こんな武装は外すんだな」

パワーリストをどさりと床に落として、幸村の体を引き寄せた。
幸村は息を呑んで、胸の中でじっとしていた。
しばらくすると、すんすんと泣き出した。

「好きなんだ…好きなんだ…跡部が好きなんだ…」

「………」

「あぁ…かっこいいよ。跡部…キミがいると俺はおかしくなる」
 
こんな告白の仕方もあるものかな、と思いながら自然と幸村の背中を撫でていた。

「で?俺様のどこを好きだって?」

「顔…」

「てめ…」

嬉しいが嬉しくない回答が不満で、幸村の体を引き離そうとした。
幸村は強い力でしがみついて離れない。

「ほんとに俺、跡部の顔に弱い…」

密着した幸村の雰囲気にあてられた。
ふふ、と幸村が笑った。

「俺に勃ってくれるのかい?うれしい」

それは心地よい刺激で、ぞわぞわとした感覚になったのは初めてだった。
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