幸村のいる家
真田は性欲も食欲も旺盛になって帰って来た。
ようやく満たされたのか、穏やかな表情でローテーブルを前に胡座をかいた。
結局、布団から浴室に場所を移して肌を温め合った。幸村はもうヘトヘトだったが、嫌とは言わなかった。
運動したら空腹だという真田にすき焼きを食べさせて、のんびりした頃だった。
「日本酒なんてよくわからないから適当に選んだよ」
一丁前に、酒は日本酒に限るという真田のために、幸村が用意しておいた。
ぐい呑みを傾けた真田は、目をつむってこくりと酒を飲んだ。
「…美味しくない?」
いまひとつの反応が不安で、幸村は手にした徳利を静かにテーブルに置いた。
「おまえが酌をしてくれたら何でも旨い」
試合後のインタビューで見せた笑顔で、満足そうに残りの酒をくいっと飲み干した。
「そ…」
幸村は、からだの下の方がきゅんとしたのがわかった。
(カメラの前で見せないでほしい…)
幸村は気を紛らわすために、真田に一度置いたぐい呑みを持たせると、再び酒を満たした。
真田は、勝利からくる興奮と歓喜を幸村を抱くことで噴出させた。戦地から戻った男のような荒々しさも、嫌いではなかった。
「真田プロの勝利に乾杯」
「ありがとう」
ふだん酒を好まない幸村も、真田が笑えば一緒に飲んだ。
そんな甘いひとときの中、跡部が訪ねて来たのは昼過ぎだった。
