桜若葉の下で


真田に案内されたのはプライベートコートだった。
壁で仕切られているから、テニスに集中できる。周りの音や他の利用者の出入りを気にしなくていい環境だ。
テニスとなると、幸村は目の色を変えた。

「ここで打てるの?」

半信半疑で、真田をちょっと見上げてきいた。

「ああ。蓮二が計らってくれた」

そこに、柳がすでに着替えて二人を待っていた。

「おまえ達も着替えてくるといい」

「蓮二!ありがとう!俺、うれしいよ」

幸村は柳の胸に飛び込んだ。

「精市…」

「でも、高いんじゃないのかい?あとで俺も…」

「そんなものは心配しなくていい。そろそろ俺たちが精市と打ちたくなっただけだ。おまえも、ここなら人目を気にせず思う存分テニスができるだろう?」

そっと肩に手を添えて柳は幸村を見下ろした。
このときは、真田に胸を触られた事も、ねっとりとした柳の視線も忘れて、幸村は二人の厚意をよろこんだ。
ちょうど一ヶ月近くも二人とネットを挟んでいなかった。

「俺も!二人とやりたかった。まってて!」

幸村はにこにこして、今度は真田の手を取ると、

「真田、早く着替えに行くぞ!」

真田の帽子が落っこちるのもそのままに、引っ張って行った。
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