桜若葉の下で


部活終わりに幸村が校門に行くと、真田がいた。
目配せされて、先に立って歩き出した真田についていく。

(不機嫌…)

心当たりがないわけではない。
女子テニス部の練習に混じり始めてから、真田と柳と距離をとってきたのは幸村の方だ。

(だって恥ずかしいんだから仕方ないじゃないか)

真田と柳がスコートをはいた自分に何をしたか。
体を支えた真田の手が、確かめるように胸を探った。
とりわけ、いつもは涼しい柳の目が、粘着質なものを含んでいて下腹がぞくりとした。

だから、迎えに来たのが真田で少しほっとした。
真田ならいくらか安心して隣を歩ける気がした。
幸村は手を後ろで組んで、真田の前に顔を出した。

「あれ、なんかちょっとカッコよくなった?」

感じたままを口に出すと、

「そうか」

ありがとう、と言われた気がした。
いつもと違う反応に調子が狂ってしまう。

「え…たるんどるじゃないのかい?」

「今のおまえからは、からかいや冗談として聞こえなかった」

「それは…そう…」

うっかり言葉に感情をのせてしまったのは、心までも女子になりつつある自信からだろうか。
以前はよく同じことを言って面白がっていた。
その度に真田が「たるんどる!」と叫んでくれれば、そうだよなと納得することができた。

「俺が変わったように見えるのも、おまえの存在があったからだと思っている」

「それは、どっちの俺だい?」

幸村は意識してシャツのボタンを二つ外した。
着ているのは男子の制服だが、素肌にスポーツブラを着けている。
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