桜若葉の下で
「それで部活に支障が出るというわけか…」
柳はいつまでたってもユニフォームに着替えない幸村を不審に思って、二人きりになった隙をみて理由を尋ねた。
嘘や冗談を見破るのが得意な柳だったから、幸村の答えに一瞬は疑った。
それもそのはず、
「女の子の日がきた」
と幸村は重い口を開いたのだ。
顎に手を当てて考えた。
(もともと精市が女子だったとしたら…何も驚くことはない)
現に、幸村と初めて出会った一年前の春、その見た目から女子かと疑ったくらいだ。
のちに、真田も同じ疑いを抱いていたとこっそり教えてくれた。
だが、つき合ってみれば幸村はどこまでもちゃんと男子だった。豪胆で強気なテニスは人を圧倒させるし、テニスコートの外ではちょっとした悪ふざけも好きだった。
もっとはっきりしている思い出がある。柳のペンションで合宿した際に、入浴中にこの目でしっかり確認している。
女子説はあっさり捨てた。
「それにしても発想が突飛すぎないか」
「お母…母親が言うんだからまちがいないんだ」
幸村は、ちょっと唇を引き結んだ。
不安げに濡れた瞳ですがるように見つめられた時、柳は動悸がした。
