一葉の写真の未来へ
「どうよ?」
「苦し…」
「何かしてやれることはあるか」
「あたま…なでて…」
跡部はひそかに笑った。
「キスして」とか「抱きしめて」とかではない答えを跡部は経験してこなかった。
経験…幸村には言わないが、求められれば女となら色々やった。
男にも言い寄られたりしたが、当然振り向きもしなかった。
『景吾くん、それはたいへん!まさか同じだと思ってる?』
跡部に待ったをかけたのはやっぱり滝だった。
今回は相手が幸村だけに、目をつぶるわけにはいかなかったという。
家が華道家元をしている。雅な芸術家にそっちの"け"が多いのかはわからない。滝自身どうなのかもわからないが、とにかく彼は知識があった。
『いい?相手は同じ"つくり"をしてるんだ。良くも悪くも、考えてみればわかるよね。イメージ、得意でしょ。まあね、そのままでも景吾くんはやさしいから』
跡部にアドバイスできる人物は限られている。
滝の言うことなら不思議と素直にきけた。
幸村の髪をなでた。
行為の最中に、こんななんでもないことをするとは思ってもみなかった。
まぶたを閉じた幸村は、苦痛に眉を寄せているが少しずつ呼吸をととのえていた。
やがてその唇が跡部を呼んで、
「きもちいい…ありがとう」
まぶたを開けてうすく笑った。
「いや…これくらい」
ただ髪をなでただけで、セックスがこんなにも清らかでけがれがない行為だったとは跡部は今まで知らなかった。
「ン…俺、なにかした?」
「いや、悪い…」
幸村の体内で跡部はまたひとつ大きくなった。
「少しためしてみてもいいか…?」
高まる胸の鼓動に、息を弾ませながらきいた。
髪をなでた手を遠慮がちに頬に触れた。
(断わられたらそのとき俺は…)
次にとる自分の行動が予想できなくて憂慮に堪えなかった。
すると幸村の中がぐんと締まって、うっかりもっていかれそうになるのをなんとかこらえる。
(くそ…幸村…!)
幸村は頬に触れた跡部の手首をつかんで、まるで色情を刺激するような攻撃的な目をして言い放った。
「まさかこれでもうおわりかい?」
そうかと思うと跡部の耳たぶにちょんと唇を寄せて、
「景吾のいじわる」
言葉の意味とは裏腹に、愛を囁かれたようだ。
