一葉の写真の未来へ
幸村がベッドに横向き寝をしていると、ついに来る日が来たのだと理解した。
このU-17 W杯合宿で、他の誰でもなく跡部と同室になった時点で、運命の巡り合わせとしか思えなかった。
寝具を剥いで、背中を抱いてくる逞しい腕が体に絡んできた。相手はすでに素肌でいるらしい。
準備は万端のようで、熱い体温と匂い立つ男のフェロモンが背中を通して伝導してきた。
「苦しいのは嫌だよ」
しかし幸村は、雰囲気を台無しにする言葉を正直に口にする。
病気の治療が影響している。
苦痛を伴う注射や検査は、十四歳の幸村の人生の一部を暗くさせた。
もうちょっと、もう少し、もう終わるから…
そう励まされてなかなか終わらない処置。
がんばって、つよいね、えらいね…
そうやっておだてられながら反発心を封じられて。
そんな絶望の中にあって、心に寄り添ってくれたのが跡部だった。
ーーー乗りかかった船は難破船だ。もういいよ
テニスも自分自身も見失いかけたとき、
『好きなやつを置いていけるか』
衒(てら)いのない言葉で、ストレートに気持ちを伝えられたのだ。
「泣くなよ、いや…泣いていい」
跡部はそっと髪をなでてくれた。
幸村は背中に跡部をくっつけたまま、涙した。
治療中堪えていた無念の涙と、完全完治した実感の押し寄せる嬉し涙と。
それから、跡部の気持ちが胸に響いてどうにも抑えられなかった。
そんな幸村の心は、機微に聡(さと)い跡部にも伝わっている。
髪をなでた手を、下の方に持っていった。
幸村は"元気"だった。
跡部は感動して、自分の手の内に収めてしまう。
「この先も、おまえの力になりたいと思ってる。悪いようにはしねぇ」
「うン…いいよ…跡部なら。俺に悪いこと、して…?」
「ゆきむら…」
体を返した幸村からの、突然のキスだった。
