一葉の写真の未来へ


「失礼するぜ」

ベッドの上で体を起こしていた幸村は、少し驚いた顔をした。追い返されはしなかったから、跡部は内心ほっとした。
さっき真田に向けていたやわらかい眼差しとは違う、不信を抱いた幸村の視線を感じながら、跡部は持ってきた物を枕頭台に置いた。

前に訪ねたときは、幸村の事情を目の当たりにしてショックを受けた。突き返された花束を抱えて傷心していた跡部に、

『それなら、プリザーブドフラワーにしたらいいんじゃない?』

知恵を授けてくれたのは滝だった。
花がドームに包まれているから、ほこりや傷がつかないし、水やりもいらないから衛生面の心配もない。
花をクリアドームに閉じ込めたそれは、二~三年はそのままの色で咲き続けるという。 
万一入院が長引いても、近くに明るく咲く花があると心が晴れるからと滝は教えてくれた。幸村と同じく花好きの滝だから、気持ちがわかるのだ。 

『景吾くんが自分でつくるの?やるねー…』

跡部自ら手づくりするときいた滝は、幸村をちょっぴり羨ましく思うくらいは驚いた。
出来上がったのは、薔薇とダリアとかすみ草を特殊加工して、両手に収まるくらいのクリアドームに封じた。温かみのあるオレンジ色を選んだのも跡部には珍しい選択だと思った。

『ちゃんとお見舞いだってわかってるんだね。真っ赤な薔薇にしたらどうしようかと思ったよ』

クスクス笑ったら、「うるせぇ」とやっぱりデコピンされたのだった。
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