come home



幸村との楽しい雰囲気を壊されて、リョーマは機嫌が悪い。
頭にきたリョーマは、南次郎をテニスコートに立たせると、めちゃくちゃなテニスをした。
幸村が傍から見ていても、いつもの彼らしくない。感情にまかせて攻めるプレーは脆(もろ)いというのに。


…実はあの後、南次郎が突然帰って来た。
当然リョーマと幸村はあわてふためいて、なんとかその場をしのいだが、南次郎はリョーマのふて腐った顔を見つけると、意味ありげにニヤニヤ笑った。

『財布忘れちゃって』

呆れたリョーマが財布を投げつければ、

『やっぱ行くのやーめた。この夏はゆきちゃんと過ごす事に決めたもんね』

今度はきょろきょろ視線を移して、わざとらしく幸村を探している。

幸村は、先にリョーマが浴室に隠しておいた。
しかし、「じっとしておいて」とは言ったが、シャワーを浴びろとは言っていない。
聞こえてくる流水の音に、リョーマは頭を抱えた。
これでは如何にも、「ふたりの間に何かありました」と匂わせているみたいだ。

『あれ?ゆきちゃんまたシャワー浴びてんの?ふーん?』

思った通り、南次郎がとぼけて聞いてきた。

ーーーさっき俺と打ったからね。汗、すごかったし。俺に負かされて悔し涙隠したいんじゃないの

結局、言い訳なんてこれしか思いつかない。
実際には、行為の終盤になって、汗と涙と体液で濡れた幸村の横たわった肢体がリョーマの記憶に焼き付いている。

『"さっき"ねぇ〜?ほれ』

窓もカーテンもぴったり閉め切っていて(ほとんど幸村に夢中になっていて)外の変化に気づかなかった。
南次郎がさっとカーテンを開け放つと、外は夕方の雨上がりだった。突然降り出した夕立が止んで、空が明るくなっていた。
これでは土のテニスコートは使えない。
これ以上の言い訳はあきらめた。

それでも気持ちがおさまらないリョーマは、小さい頃にそうしたように、南次郎の手を引っ張ってコートに連れ出したのだった。

ーーーなんでもいいから、勝負するよ

南次郎は、ガハハハと笑った。
あんまり嬉しそうにするから、リョーマはあわてて手を離したけれど。
8/11ページ
スキ