come home
「幸村さん、まさか」
リョーマがまだ何も言っていないのに、幸村は恥ずかしそうに顔をぽぽぽと赤くした。
唇をちょっとへの字に曲げて、泣くのを我慢しているような、そんな表情をした。
「幸村さんて…俺のこと好きでしょ」
リョーマは、「ふーん」と、彼特有のしたり顔で幸村を見下ろした。
幸村にしてみれば、そんな年下の思惑に簡単にはまってしまうのを避けたいのだろう。できるかぎり、首を振って否定した。
「いや、そんなの、もう好き決定じゃん…」
リョーマはぐんと顔と顔を近づけて、鼻の頭にちゅっとした。
離れると、きゅっと目を閉じたままの幸村がまるで、
ーーー次は何をされるんだろう…
そう期待混じりに待っているみたいで、心臓がトクンとなった。
「ねえ、幸村さんのここ。すごいことになってるんだけど。わかってる?」
下着の上から撫で上げると、幸村は鼻にかかった声を漏らした。
(…!声、あまい…だめじゃん、こんなの…)
リョーマは居ても立ってもいられなくなって、Tシャツを脱ぎ捨てた。
「ほら、幸村さんも」
ちょっとノリノリで、おろおろする幸村のTシャツを引っ張り上げる。
「…バンザイしてくンないと脱げないでしょ」
動こうとしない幸村に、冷めた口調でたしなめる。
幸村はぎこちなく両腕を上げた。見えた脇の下が、どちらかといえば男らしさに欠けていて、リョーマの心をムズムズさせた。
幸村と目が合った。その目が、
「これでいいかい?」
そういっているような気がして、
「上出来」
口角を上げて応えてやった。
それから、自分ほどではないにしろ、きれいに引き締まった身体つきを認めて少し安心した。
(なんだ…ちゃんとテニスしてんじゃん)
そう思ったがすぐに、嫌な感情がわいてきた。
(誰と?)
おそらく南次郎だけではないだろう。
考えても、リョーマが知っている範囲の幸村の交友関係なんてたかが知れている。
たとえば、幸村のハーフパンツがそれを物語っている。
手荒にハーフパンツを脱がせて、幸村が「あっ」と驚きの声を上げる前にキスをした。
そのまま下着の中に左手をすべり込ませる。
リョーマは、舌で幸村の歯や粘膜を楽しんで、手のひらで幸村のカタチや質感、体温を感じ取って想像した。
(ぼうやぼうやっていうから…なんだ、俺のと変わんないじゃん)
「越、前…」
キスの合間に、名前を呼ばれた。
「なに、どんな心境の変化なわけ?」
知っていてわざと聞く。
リョーマは自分のズボンの前をくつろげながら、ドキドキしていた。下着の中の変化も幸村の目に止まったはずだ。
「だってそれはもう…」
「ぼうやサイズじゃないっしょ」
リョーマにしては大げさに笑った。
それから幸村の前髪を左右に分けて、額にキスをする。二人分の下着を取ったら、肌を密着させて抱き合った。
広くもないソファーの上、素っ裸でお腹とお腹をくっつけ合って、目と目が合ったら唇も重ねた。
「俺、重くない?大丈夫?」
「ふふ…へいき」
「なんで笑うの…ちょっと、髪…くしゃくしゃしないでよ」
「越前リョーマが人に気をつかうのがおかしくてね」
あんただからだよ、そう言いかけた言葉をしまった。何気なく幸村の胸の辺りを撫でたら、ほんの少し肌触りが変わったのを見つけたから。
「もうなんともないよ」
幸村は少し困った顔をした。
「らしくないな。そんなに怯えた顔しなくても」
「痛かった?苦しかったの?泣いたりした?」
「驚いたな…身近にもそんなはっきり聞いてくる人はいなかったよ」
「…知りたいから。知っとかないとヤダ…悪いけど…」
「痛いな」
「え…!」
リョーマはびっくりして身を引いた。
「あぁ…もう…ドキドキしすぎて心臓に悪い。それで塞いだら落ち着くかも」
照れ隠しなのか、幸村は唇を尖らせた。
幸村のこういうところが、自分より年上だと忘れさせてくれてリョーマは好きだった。
「ふーん、悪化するんじゃない?」
唇の前に差し出された幸村の指先を握って、リョーマはもう元通りの強気な顔にもどっていた。
