come home
リョーマの家のテニスコートに、久しぶりに生気がよみがえっていた。
しかしよく見ればコートは凸凹で、ラインも途切れている箇所がある。南次郎が手入れを怠っていた証拠だろう。
昼過ぎ、空港に着いたから車で迎えに来いと連絡したのに、電話に出ない南次郎のワケがこれでわかった。
息子の帰国より夢中になるテニス(ひと)ってなんだよ、という気持ちで鐘楼堂に寄りかかってコートを覗いた。
「ほれ」
「…!」
「よっと」
「ぁ…!」
「まだまだ」
「……くっ」
「じゃ、これはどうかな…と!」
「………」
「ほーら、どうした」
「………」
「いいね〜その意気その意気」
逆光で南次郎におちょくられている相手の顔まではっきり見えない。
(でも親父が楽しそうだからいっか)
リョーマが海外で活躍するようになってから、南次郎は日がな一日ごろごろしていると教えてくれたのは、従姉の菜々子だ。
『リョーマさんがいなくてさみしいのよ』
手応えのある青少年を探しに、中学や高校のテニス部に顔を出しては不審者扱いされるのもしばしばだとか。
(あれにイライラしたら駄目なんだよね)
今でこそ、リョーマも南次郎のテニスの良さがわかるが、中学までは悔しくて悔しくてたまらなかった。
それがフッと"楽しい"に変わったのはいつからだろう。
相手がどんな人物か知れないが、なかなか食らいついている様子なので放って置くことにした。
スマホを見れば、催促の着信が何件も入っていた。
「やばっ…桃ちゃん先輩と会う約束してたんだった」
久しぶりに会う先輩の顔が見たくて、自宅兼寺の敷地を飛び出した。
