幕が開ける
忍耐を得意とする真田でも、綱渡り状態の危ない状況だった。
部室を出るとすぐに思い切り腕を引かれた。
「約束は守っただろうな」
「当然だ」
下から睨みをきかせてきた丸井に、胸を張った。
「どうだかのぉ…?相手はあの幸村じゃき。おまえさんの鋼でできた心の"たが"が外れてもおかしくないの」
「どうなんだよ!幸村くんは…」
仁王が余計な探りを入れて、丸井が激昂した。
「真田はそう簡単に"たが"を外さねぇ」
「私も同感ですね。大切なひとに無体を働くなんて道理ではありませんからね」
逆にジャッカルと柳生は、幸村に対して多少の罪悪感が残る真田にとっては心苦しいくらいの、尊敬にも似た擁護をした。
「積年の願いは叶ったか弦一郎」
普段は嫌う憶測でものを言った蓮二は、わざとだろう。
おかげで仁王以外のメンバーは疑ったらしく、真田は溜め息を吐いた。
「え、願いが叶ったって…真田副部長、ついに幸村部長を倒しちゃったんスか?!」
キラキラした瞳で見つめてくる赤也に、つい、身の潔白を申し開きせねばと口を開きかけると、
「テニスだ、弦一郎」
耳打ちした蓮二が、笑いをかみ殺している。
こんなメンバーだが、以前から幸村との仲を応援してくれていた。
気の毒なほど進展のないふたりに、「全国大会を区切りにしてはどうか」と誰言うとなく話が進んだ。
幸村に進言するのは恐れ多いという事で、真田をなびかせた。
メンバーの見るところ、ふたりは両想いだが、幸村は真田への恋心を今ひとつ自覚していない。
時折見せる幸村の悶々とした様子は、メンバーの庇護欲をくすぐった。
真田も、恋の機が熟した状態を保ち続けるのも限界とみえて、メンバーにカミングアウトした。
後輩である赤也に伏せたのは、うまくいかなかったら示しがつかないという、つまらない威厳のためだった。
「幸村部長…大丈夫っすかね?あの人、大会で負けたばっかなのに」
赤也が哀れみの目を真田に向けた。
どうやら、傷の癒えない状態の幸村をいじめたみたいに思われている。
