幕が開ける


ガラス戸を開けて、ショーケースの中の盾を手に取った。それは思ったよりもずっと重く、俺の手の中で息づいているようだった。

「落とすなよ」

真田がすぐ後ろから言った。
まるで俺のやる事なす事すべてが危なっかしいというような口ぶりだ。
俺の手から盾を受け取ろうとする真田の手を除けて、

「今はじめて手にしたんだよ。だって大会の表彰式は真田が受け取って、ここに収めるのもおまえがやったじゃないか」

部長が指一本触れない表彰盾なんて聞いたことがない。
真田は言いにくそうに口を開いた。

「あの時のおまえは心ここにあらずだったからな。投げ捨てられたのではかなわんと思ってだな…あとは、やはりおまえには優勝旗を持って欲しかったという俺のわがままだ」

あわてる真田をよそに、両手で盾を高々と掲げた。キラリと光る"準優勝"の刻印が目を引いた。

「幸村」

え、と振り返ったとき、抱きすくめられた。
危うく落としそうになった盾も一緒に、俺は真田の腕のなかで動けなくなった。

「好きだ」

「…俺が勝って、優勝しても同じことを言ったかい?」

「三連覇の優勝旗を掲げたおまえの笑顔か…そんな輝きを見てしまったら、口より先に手を出しただろうな」

真田があんまり大真面目に言うから、想像してしまったよ。優勝旗を下敷きにして、強引に抑え込まれた自分のしまりのない姿を。
そして、そうなりたいと願った自分に気づいてしまった。

「じゃあ、お預けを食ったわけだね。俺は心から笑ってない」

絞り出した声が震えた。

「負けて腐った顔の俺は嫌だろう…?」

「水を向けられているようにしか聞こえんな」

「…?」

「…誘っているのか、と聞いている」

「な…!おまえが先に言い出したんだろ!だから俺は…負けた俺にはすぐにおまえを動かすほどの魅力がないんだなってあきらめる…つもり、で…」

だめだ…俺のあそこが諦めるなと、もがいてる。
俺は膝を抱えてしゃがんだ。
真田の手が伸びてきて、びくりとした俺の反応をよそに、俺の体から盾を大事そうに抜き取った。
よほど大切なんだ。少しの音もたてずにショーケースに盾を置いたらしい。

「褒美はちゃんともらう。それを許されたと俺は受け取っている」

その言葉を最後に、真田は部室から出て行った。

「それ…いつだよ…」

残された俺は、膝に顔を埋めた。
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