幕が開ける


椅子に座る真田の膝の上に跨った。
この時少しでも真田が膝の痛みに顔を歪めたら、俺は失望したかもしれない。

さすがだよ、真田。
両手で真田の頬を包むと、大きく見開かれたその目を見つめた。
幻想で見たのと同じキスをした。

下の方で何かがむくりとして、それが何かわかると、真田の本気が現実味を帯びてきた。
俺のまるごと欲しいって、つまりこういう意味だよなぁ。
黙って真田の膝から降りた。
引き止める手は伸びてこなかった。

もし俺が試合に勝っていたら、真田は告白しなかったのだろうか。
もし俺が試合に勝っていたら、俺は心の底から皆と笑い合うだろう。すると真田は、俺への気持ちにまた蓋をするつもりだったのだろうか。
俺があふれる笑顔で皆と勝利を喜んでいる間、真田はどんな想いで俺に視線を注いだだろう。

そこまで考えて、打ち上げの席にひとりぽつんとパイプ椅子に座る真田の姿が浮かんだ。
俺は真田を見つけて、きっと微笑むだろう。真田も笑顔を返したに決まってる。
笑って終わる最高の締めくくりだ。
もしそうだとしたら、懐かしい空き地の草いきれの夜も、照れくさい武将ごっこもやらずに夏が終わる。

あふれた涙の意味はわからない。
敗北の悔しさが遅れてやってきたような気もするし、喪失感や切なさがじわじわとやってきた気もする。

「気の済むまで泣けばいい。それとも、俺の気持ちがそうさせたのなら謝る。謝ってもどうしようもないが、とにかく俺がここを出て行く」

真田が、すぐ隣を通り過ぎようとした。
ちょうど落ちた涙が畳の目に滲んでいくのを見て、急に寂しくなった時だったんだ。
俺は真田の手をつかまえて、離さなかった。
8/15ページ
スキ