幕が開ける
結局、座卓を拭く手を止めて聞かずにはいられなかった。
「…なんであんな芝居したのさ」
「何かになりきらないと臆病風に吹かれてしまいそうだった。実際何度もそうだった。もう何度、今こそはと思っては断念し、未練を断ち切ろうとしたかわからん…」
パイプ椅子に座ってヘアバンドを握る真田の拳が、膝の上で固く握られた。それを見つけて、真田の想いが見せかけではないとわかると、不安とドキドキから逃げ出したくなる。
「膝…大事にしないと。そんなんじゃいつになったら俺と打ち合えるんだよ」
真田の気持ちが照れくさくて、そんな心にもないことを言ってしまった。
だけど真田は、ほんとうに心から申し訳なさそうに眉を寄せた。
「…ああ、すまん。すぐに治すから待っていてくれ」
「褒美はどうするんだよ」
間髪を入れずに言って返したのは、このまま臆病風に吹かれてしまっては困ると思ったから。
いつの間にか俺は、真田の膝の前ににじり寄っていた。見上げれば、真田の声は口の中にこもってはっきりしない。
一大決心なんだ。無理もない。
そう、俺も。おまえも。
「幸村…!」
上擦った声に引き止められた。
感情と欲求の狭間で揺れている、そんな顔をしていた。今ならキスのひとつくらいできそうだと思えるような、そんな顔。
