幕が開ける
正直一人になりたくて、心地よくも無い風に当たりに来たのにな。
半袖のユニホームの袖を引き上げる。じっとりと汗ばむ肌に、二の腕が外気にさらされてちょっとだけ気持ちよかった。
真田。どうせ皆に引き止められても言うことを聞かなかったんだろう。さて、どうしてやろうか。
ジャージに隠れた真田の膝の辺りに目を留めて考えた。
「恐れながら」
彼にしては小さすぎる声に、意に反して顔を上げてしまった。
「恐れながら申し上げます」
「………」
すると痛むだろうに、真田は片膝をついて頭まで下げた。
よっぽど勝ち試合が嬉しくて浮かれているんだと、そう受け取る事にした。それだけの成果をあげたんだから当然なんだけど。
だから突然始まったこの茶番劇に、俺は付き合ってやる。咳払いをひとつして、昔真田と遊んだ"武将ごっこ"を思い出していた。
「苦しゅうない。おもてをあげよ」
浮かれているにしては精悍すぎる幼なじみの顔つきに驚いた。遊びにしては出来過ぎた演技に、俺も負けじと芝居を打つ。
「良い。なんなりと申せ」
思えば、武将が好きなくせに真田はいつも俺を武将に見立てていた。
「不躾を承知の上で幸村様にお願い申し上げます」
俺はひとつ、うなずいた。
「此度の勝利の褒美を頂戴したく、参上致しました」
なんだ。やっぱり茶番じゃないか。
演ってる内に楽しくなってきた。
あの真田が俺から褒美を欲しがっている。面と向かって言えないから、こんなごっこ遊びまでして。
いいよ。負けた俺に断る権利はないんだから。
「して、其方は何が欲しいのだ」
物欲の無さそうな真田が欲しい物ってなんだろう。
南部鉄器文鎮のダルマだっけ…あれは俺もまだ見つからないんだよなぁ。
「叶うならば幸村様。御身まるごとを切望しております」
