幕が開ける
美味しい料理とお喋りに花が咲いて、こんなひと時は久しぶりだった。
多少の悪ふざけも、今度ばかりは真田も目をつむっていた。うっすらだけど、口元が満足気に見える。
座卓に座布団の一室だったけど、真田だけはパイプ椅子に座って皆の輪にいた。
それだけ膝の負担が大きいんだ。
だって大抵の場合、痩せ我慢を張るのが彼の性質だからね。
俺は気に入った魚の佃煮をもう一度つまんで、急須のお茶を飲んだ。
それからおもむろに席を立っただけなのに、あちこちから視線を受けてしまう。皆さりげなくそうしているんだろうけど、俺にはわかるよ。
「ちょっと外の風にあたってくるよ」
皆俺の心の内を気遣ってか、それ以上追求したりせずに快く見送ってくれた。
集会所の裏に空き地があるのを思い出した。
まだ幼稚園児の頃、何度か真田とそこで遊んだ記憶があった。
ぐるりと回って行ってみると、そこはまだ空き地のままだった。雑草は生えていても、定期的に手入れしているようだ。草ぼうぼうとは言えない。
リーリージージーと夜の夏の虫が鳴いている。
足を踏み入れると、わずかに雨露が触れた。
俺たちが炎天下で試合中、こっちは雨が降ったのだろうか。
ジメジメと蒸し暑い、そんな夏の夕暮れだった。
俺たちの全国大会が、
「終わったな」
ひとりごちようとしたら、同じ言葉を先に言われた。
真田だとわかったから、俺は振り向きもしなかった。
