距離感を教えて


愛情のやり取りに満たされた幸村は、少しの間うとうとして、炬燵布団にくるまって寝転んでいる。
そっと身をよじれば、奥にまだ真田が残っているような体感があって、もじもじと足を動かした。

(真田…いない)

当然隣に居るつもりで目を開けたから、しゅんとなってしまう。
今が何時なのか確かめようとして、棚の上の置き時計を見ようとした時だ。フッと部屋の電気が消えて、炬燵の熱も消えてしまった。
暗闇というのは、実際よりも時間の経過が長く感じるものだ。

(…何してるんだよ。早く戻って来いよ)

真田の家は広い。
小学生の頃は、昼は隠れんぼや追いかけっこで楽しんだが、夜は一転トイレに行くのも怖かった。昼間は何とも思わなかった甲冑やら日本人形やらにぞっとしたのを覚えている。

「………」

炬燵の温もりもなくなって、幸村は体を丸めた。

(あの頃は、こんな家でひとりで寝てトイレに行ける真田をすごいなぁって思ってたな。俺の手を繋いで、トイレに付いてきてくれたっけ…)

思い出すと面映ゆい気持ちになって、決意する。

(今度は俺が迎えに行ってやろう)

どこかの部屋の振り子時計がボーンボーンと八回鳴った。真田家の住人は今夜は銭湯に行った後、外で食事して帰ると真田が言っていたから、幸村にとっては行動しやすい。

(もう迷いはない)

膝掛けを肩に羽織って障子戸を開けた。
歩く度に軋む音を出す長い廊下を、耳を頼りに歩いて行った。
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